歴史から読み解く「コロナショック」経済の行方 酷似「スペイン風邪」後の経済と株価を考察

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では、スペイン風邪の歴史を教訓にするならば、感染者の急拡大で社会は混乱したものの、経済への影響はそれほど大きくなかったということになるのだろうか。そう願いたいところだが、どうしても引っかかるのが、2回目の感染ピークと同じタイミングで到来したバブル経済の崩壊である。

スペイン風邪は、流行が拡大しているときは、経済にそれほど大きな影響を与えなかったが、第1次世界大戦バブル崩壊の引き金を引いた可能性は十分にある。もし、そうであるならば、今回との類似点は多い。

結局、日本だけが一人負けしていた

今回の感染拡大で日本を含む世界の株式市場は大打撃を受けたが、リーマンショック級の株価下落となったのは、単にコロナショックが大きかったからではない。

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リーマンショック以降、アメリカは絶好調ともいえる景気拡大が続いており、一部からは株価や債券価格のバブル化を指摘する声が上がっていた。日本についていえば、トヨタをはじめとするメーカー各社が、拡大が続くアメリカ市場に製品を売り込むことで、何とか国内景気を維持してきたという面が大きい。

つまりアメリカ経済はバブルの兆候があり、日本経済は、アメリカのバブルに依存してきたというのが実態である。

だが、アメリカの好景気があまりにも長すぎることから、多くの関係者が、そろそろアメリカ経済が景気後退(リセッション)に入るのではないかと危惧していた。こうしたタイミングでコロナウイルスの感染が急拡大したので、株式市場への影響は極めて大きなものとなっている。

つまり、今回の株価下落は、コロナショックだけでなく、バブル崩壊と全世界的な景気後退懸念が加わっており、これが市場参加者の心理を極端に悪くしているのだ。

上の画像をクリックすると、「コロナショック」が波及する経済・社会・政治の動きを多面的にリポートした記事の一覧にジャンプします

ちなみに1920年代のアメリカは、欧州復興特需で経済を急成長させ、欧州各国も、戦後処理が一段落してからは、それなりの安定成長を実現している(敗戦国のドイツを除く)。

しかし日本だけは、経済の体質転換が進まず不景気が続き、そのまま世界恐慌を迎えてしまった。日本経済だけが一人負けしてボロボロの状態となり、軍部の台頭によって最終的には無謀な戦争に突入した。一連の出来事がもたらした結果は言うまでもなく、終戦による日本経済の破綻とハイパーインフレであった。

つまりスペイン風邪の流行は、直接的には経済に大きな影響を与えなかったが、俯瞰的に見た場合、(あくまで結果論だが)日本経済の終わりの始まりを示唆していた。

日本経済はここ数年、消費の低迷が続くなど、経済の基礎体力が著しく低下している。ここでアメリカが景気後退に陥った場合、日本経済への打撃は計り知れない。歴史を教訓にするならば、日本経済が底割れするような事態は何としても回避しなければならない。それが実現できなければ、長期にわたる景気低迷を覚悟する必要があるだろう。

加谷 珪一 経済評論家

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かや けいいち / Keiichi Kaya

仙台市生まれ。1993年東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在、「ニューズウィーク(日本版本誌)」「現代ビジネス」など多くの媒体で連載を持つほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。著書に『新富裕層の研究』(祥伝社新書)、『戦争の値段』(祥伝社黄金文庫)、『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『縮小ニッポンの再興戦略』(マガジンハウス新書)など多数。オフィシャルサイト http://k-kaya.com/

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