ポストコロナ「日米同盟に見えた大きな課題」 一段強化と依存できない分野の自立が必要だ

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南シナ海においても、中国海軍によるフィリピン軍艦艇へのレーダー照射や中国公船がベトナム漁船に体当たりして沈没させる事件が起きている。さらに人民解放軍の公式サイト等では、台湾に対する武力統一をほのめかすメッセージが発信され挑発がエスカレートしている。

アメリカ軍も抑止力を維持するため、F-35を搭載した強襲揚陸艦を展開し日本や豪州などの同盟国と共同訓練を実施、また沿岸戦闘艦によるパトロールを行っている。アメリカ海軍は台湾海峡への艦船派遣を継続し、4月には中間線を越えて中国側を航行した。アメリカ空軍もアメリカ本土から日本周辺へB-1Bを飛行させ、航空自衛隊のF-15、F-2戦闘機と共同訓練を行った。

だがこれらの対応は、空母不在の穴を埋める緊急措置の意味合いが強い。前述の通り、アメリカ軍はインド太平洋地域の戦略態勢を対中シフトしつつあるが、道半ばだ。アメリカ海軍は空母機動部隊を11から9に2個削減しより小回りの利く戦闘艦艇を増強、海兵隊も地上戦闘即応態勢から海上作戦と呼応した部隊編制へと規模を縮小する計画である。

アメリカ空軍はグアムへの爆撃機駐留を取りやめ本土へ撤収済みだが、これらの動きはむしろ太平洋におけるアメリカ軍のプレゼンスを減らす方向に見え、批判と懸念が多い。

インド太平洋軍デービッドソン司令官は4月1日、200億ドルの追加予算によって、グアムの防衛体制強化、精密攻撃兵器の第一列島線配備、戦力分散基盤の構築等が必要であると議会証言した。

莫大な国費と景気後退は国防予算を大きく圧迫

議会も対中抑止力を強化する法案を検討しているが、コロナ危機対応に投入された莫大な国費と危機後の景気後退は間違いなく国防予算を大きく圧迫する。その影響は長期化し、態勢構築が中倒れしたり、同盟国へのさらなる負担要求に転化したりするリスクは大きい。日本にとって日米同盟の抑止力は必要不可欠であり、アメリカ軍の態勢構築にはより能動的に関与すべきである。

中国の攻勢は非軍事の分野でも目覚ましい。中国の意図に沿わない国からの農産物の輸入禁止や高関税の付加、逆に中国からの輸出禁止や訪問制限など、2国間の関係をテコにした影響力行使を乱発している。

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