5月20日は米中関係にとって当面の方向を決める大きなターニングポイントだった。
台北市の台湾総統府近くにある 迎賓館『台北賓館』ではこの日の朝から、蔡英文(ツァイ・インウェン)総統の2期目の就任式が行われた。式典の後半、会場正面に据えられた2基の大型スクリーンには、アメリカのマイク・ポンペオ国務長官からのビデオメッセージが映された。アメリカ国務長官としては初めてのことだった。
ポンペオ氏は蔡総統を“Taiwan’s President” と呼び、アメリカにとって台湾は「信頼できる“partner”」だと評価した。
アメリカ政府からはさらに、マット・ポッティンジャー大統領副補佐官(国家安全保障担当)、デービッド・スティルウェル国務次官補も続いて画面上に登場した。昨年末に退任したランドール・シュライバー前国防次官補も同様にビデオメッセージを寄せ、アジア担当の政府高官と経験者の「そろい踏み」となった。トランプ政権として、「蔡政権支持」を明確に打ち出そうという意図が、明らかだった。
アメリカの台湾支持に中国が猛反発
当然、中国は猛反発した。外交部は直ちに声明を発表し、「『一つの中国』の原則に深刻に違反」「内政干渉」などと非難した。
時差のために約半日遅れるが、この日は、ワシントンでも米中関係に関して、大きな動きがあった。
ホワイトハウスが、政権の包括的な対中戦略をとりまとめた報告書「中国に対するアメリカの戦略的アプローチ」を発表したのだ。トランプ政権がこのような文書を策定、公表したのはこれが初めてだった。
キーワードは、「中国共産党の有害な行動」と「原則にのっとった現実主義」だった。
この手の政府の公式文書で、相手国の行動や意図を頭から「有害(“malign”)」と決めつけることは珍しい。それもこの報告書ではこの単語を繰り返し計8回も使っている。該当する行動として挙げられているのは、「権威主義、自己検閲、腐敗、重商主義経済の奨励や、民族・宗教的多様性への寛容性の欠如」などだ。
中国のさまざまな活動と意図は、本質的に悪質なものだと断じる強烈な非難の姿勢がよみとれる。
「原則にのっとった現実主義」への回帰は、アメリカが最近、「失敗」を認めて放棄した対中関与(“engagement”)に代わる新たな行動指針だ。これは、この報告書の肝と言える部分だ。
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