米中競争の軸が「経済から政治へ」と移った理由

コロナ禍で協力進まず、むしろ溝が深まった

政治システムへの変異で、米中関係は硬直化している(写真:Yuri Gripas/ロイター)
米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。
コロナウイルス危機で先が見えない霧の中にいる今、独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。

5月20日は米中関係にとって当面の方向を決める大きなターニングポイントだった。

台北市の台湾総統府近くにある 迎賓館『台北賓館』ではこの日の朝から、蔡英文(ツァイ・インウェン)総統の2期目の就任式が行われた。式典の後半、会場正面に据えられた2基の大型スクリーンには、アメリカのマイク・ポンペオ国務長官からのビデオメッセージが映された。アメリカ国務長官としては初めてのことだった。

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ポンペオ氏は蔡総統を“Taiwan’s President” と呼び、アメリカにとって台湾は「信頼できる“partner”」だと評価した。

アメリカ政府からはさらに、マット・ポッティンジャー大統領副補佐官(国家安全保障担当)、デービッド・スティルウェル国務次官補も続いて画面上に登場した。昨年末に退任したランドール・シュライバー前国防次官補も同様にビデオメッセージを寄せ、アジア担当の政府高官と経験者の「そろい踏み」となった。トランプ政権として、「蔡政権支持」を明確に打ち出そうという意図が、明らかだった。

アメリカの台湾支持に中国が猛反発

当然、中国は猛反発した。外交部は直ちに声明を発表し、「『一つの中国』の原則に深刻に違反」「内政干渉」などと非難した。

時差のために約半日遅れるが、この日は、ワシントンでも米中関係に関して、大きな動きがあった。

ホワイトハウスが、政権の包括的な対中戦略をとりまとめた報告書「中国に対するアメリカの戦略的アプローチ」を発表したのだ。トランプ政権がこのような文書を策定、公表したのはこれが初めてだった。

キーワードは、「中国共産党の有害な行動」と「原則にのっとった現実主義」だった。

この手の政府の公式文書で、相手国の行動や意図を頭から「有害(“malign”)」と決めつけることは珍しい。それもこの報告書ではこの単語を繰り返し計8回も使っている。該当する行動として挙げられているのは、「権威主義、自己検閲、腐敗、重商主義経済の奨励や、民族・宗教的多様性への寛容性の欠如」などだ。

中国のさまざまな活動と意図は、本質的に悪質なものだと断じる強烈な非難の姿勢がよみとれる。

「原則にのっとった現実主義」への回帰は、アメリカが最近、「失敗」を認めて放棄した対中関与(“engagement”)に代わる新たな行動指針だ。これは、この報告書の肝と言える部分だ。

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