香港版「国家安全法」でこれから何が起きるか コロナで加速した米中チキンゲームの先行き

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一国二制度の有名無実化に香港市民の反発は必至だ。写真は5月24日、 「国家安全法」反対デモの参加者を捕える警官隊(写真:AP/アフロ)

5月28日午後に閉幕した中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、香港への国家安全法導入が決まった。中国の国家安全法は政権転覆や機密情報漏洩の防止のみならず、領土保全からインターネット規制まで広い分野をカバーする法律だ。同じような法律を香港にも制定させることを、香港の議会にあたる立法会を飛び越えて決めた。

この法案に反対するアメリカのトランプ大統領は、中国に「強力な制裁」を今週中に行うと明言している。米中関係は極めて緊迫した局面を迎えた。

全人代の締めくくりとして、李克強首相は同日の日本時間17時過ぎから2時間にわたって会見した。李首相は経済関係の質問には極めて饒舌に答えたが、香港の記者から「今回の決定は一国二制度の放棄を意味するのか」と聞かれたときの回答はあっさりしていた。

「一国二制度は国家の基本国策だ」としたうえで、香港国家安全法については、「香港の長期的な繁栄と安定を維持するためのものだ」と型どおりのコメントにとどめた。

アメリカは「強力な制裁」を準備

全人代での採択を待たず、アメリカのポンぺオ国務長官は27日に「もはや香港が『高度な自治』を維持しているとは言えない」と宣言した。このメッセージは、米中関係において大きな意味を持つ。アメリカには香港との関係を定めた法律があり、香港に一定の自治があることを前提に中国本土より優遇してきたからだ。

イギリスの植民地だった香港が1997年に中国へ返還されるにあたり、西側の関心はイギリスが残したルールに則った市場経済が維持されるかどうかにあった。中国も、西側との貿易や投資受け入れの窓口としての香港の特殊な地位は維持したかった。両者の利害が一致した「一国二制度」という看板の下で、香港には返還後50年は高度な自治権と資本主義制度の維持が認められた経緯がある。

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