新型コロナウイルスの感染拡大によって関心が低下したアメリカ大統領選だが、決戦となる11月3日の投票日まであと5カ月余りとなった。
現職の共和党ドナルド・トランプ大統領に対し、民主党のジョー・バイデン元副大統領が政権奪還を目指して戦う。アメリカ政治サイトのリアル・クリア・ポリティクスの集計では、5月26日時点でトランプ氏の支持率は42.4%
トランプ氏を悩ませる景気悪化と郵送投票
「コロナの影響で選挙集会が開けず、バイデン氏のアピール力が低下している中、実質的にトランプ氏の“信任投票”となっているが、現状はトランプ氏が自滅している格好」と、丸紅経済研究所の今村卓所長は指摘する。
「消毒液を注射してみてはどうか」という発言を含め、コロナ対応を通じてトランプ氏の資質に対する批判が共和党支持者からも噴出している。同氏は自らを「戦時大統領」と称しているが、非常時に人心が国旗(指導者)の下へ結集する「ラリー効果」は限定的で、長続きもしなかった。
トランプ氏にとって最大の打撃は、史上最長の拡大が続いていた景気がコロナ禍で奈落の底へ沈んだことだ。議会予算局は4~6月期の実質GDP(国内総生産)成長率を年率マイナス約40%と予想する。失業率は大恐慌期並みの20%超えが視野に入った。半分強を戻したとはいえ、株価も大きく下落している。
もっとも、投票日までまだ5カ月あり、「情勢を判断するには時期尚早」(今村氏)だ。そもそもコロナ禍の最大の責任は感染源の中国にあるとの世論が多く、トランプ氏も中国批判を強めている。ワクチンの開発期待で消費者や企業のマインドが改善し、景気と株価の回復が速まる可能性もある。
反面、「トランプ氏は経済再開に前のめりになっており、感染第2波が来れば景気と株価のマイナス要因となる」(今村氏)。第2波のタイミング次第でトランプ氏には致命傷ともなりかねない。
コロナの影響による投票方法の変更が選挙結果を左右する可能性もある。一部の州では郵送投票に全面的に切り替えたり、投票所と郵送投票を併存させたりする動きが出ている。従来は不在者投票のみだった郵送投票が増えれば、マイノリティーや低所得層の投票が増え、民主党に有利に働くとの見方が多い。共和党は阻止へ動いており、トランプ氏もツイッターで「郵送投票は不正行為を生む可能性がすごく大きい。それに共和党にとっては有利にはならない」といら立ちをあらわにしている。
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