バイデン氏が政権を取れば、世界保健機関(WHO)や世界貿易機関(WTO)などの国際機関に背を向けるトランプ氏とは違い、基本的には国際協調路線に戻るとしても、オバマ時代とは変化が予想される。拠出金など「資金分担」に絡むことについては見直し機運が高まりそうだ。
環太平洋経済連携協定(TPP)にしても、オバマ政権は推進の立場だったが、バイデン氏はすぐには加盟せず、再交渉するとの立場。選挙の接戦州である中西部のラストベルト(さびた工業地帯)を中心に、アメリカの労働者の間で自由貿易に対する不安感が広まっているためだ。
世論の変化を背景に対中強硬姿勢は続く
対中関係においても、「オバマ時代に比べれば強硬になる可能性が高い」(渡辺氏)。もともと民主党は中国に融和的と見られるが、中国が経済的にも軍事的にも台頭するにつれ、世論が大きく変化していることが背景にある。
アメリカ調査機関のピュー・リサーチ・センターが3月に実施した世論調査によると、中国に対して「好意的ではない」と答えた人の比率が全体の66%と、調査を開始した2005年以来の最高を記録した。中国の影響力を主要な脅威と考える人も62%に及ぶ。コロナの影響もあるが、中国の輸出増加による貿易赤字拡大や雇用減少に加え、地球環境・人権問題、サイバー攻撃、軍事力拡張を深刻な脅威と考えるアメリカ国民が増えている。
トランプ氏の対中強硬姿勢を評価する一方、オバマ時代の対中姿勢を弱腰と考える国民が増えており、トランプ氏は「北京寄りのバイデン」などと攻撃を加えている。
民主党としても、世論の変化は無視できない。今や対中強硬姿勢は超党派の流れと言っていい。「中国のファーウェイに対する規制強化も議会主導であり、民主党も関わっている。民主党政権になればトランプ政権のような高関税政策がなくなるとしても、技術覇権や安全保障の観点から根底にある中国との対立関係は消えない」と、今村氏は言う。
もともと民主党政権は人権問題に関心が高い。香港の混乱に象徴される人権問題を通じて中国批判を強めることも想定される。
日本にとっては、オバマ政権時代の副大統領であるバイデン氏は既知のリーダーであり、民主主義の推進と同盟国との連携を基本路線としているため日米関係強化への期待は高い。TPPについてもオバマ政権時代から交渉に参加したもので、自由貿易には十分な理解がある。
しかし、中国の台頭や景気の悪化によってアメリカの世論は変化しており、バイデン氏もオバマ政権時代の政策見直しを余儀なくされている。とくに米中関係は基本的に対立が続くと見られ、場合によって一段と悪化する可能性も高い。中国とは地理的にも経済的にも関係の深い日本としては、引き続き大きな影響が及ぶことを想定する必要がある。
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