では、バイデン氏がこのまま優勢を保って本選挙で勝利すれば、アメリカの政治・経済はどのように変わるのか。
バイデン氏は前バラク・オバマ政権の副大統領であり、オバマ氏の「後継者」を自認する。慶応義塾大学の渡辺靖教授は、「基本的にはオバマ時代の政策に戻る。トランプ政権が覆したものを復元する方向」と見る。
例えば、トランプ氏が厳格化した移民政策は柔軟化され、銃規制は強化される見通しだ。イランの順守が条件とはいえ、ウラン濃縮制限の見返りに経済制裁を緩和する「イラン核合意」(アメリカは2018年5月離脱)の復帰が予想されるほか、地球温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」(同2020年11月に離脱予定)への再参加が見込まれる。
大転換する環境・エネルギー政策
環境・エネルギー政策は大きく転換しそうだ。トランプ氏は、オバマ政権が認めなかった原油パイプラインの建設計画を推進するなど、気候変動対策よりも産業重視の姿勢を鮮明にしてきた。一方、バイデン氏は「クリーンエネルギー革命」を標榜し、再生可能エネルギーへの投資拡大により温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロにすると公約している。
2021年からの10年間で1.7兆ドル(約180兆円)の投資を計画し、経済成長との両立を目指す。財源にはトランプ減税の撤回やタックスヘイブンの優遇措置削減、化石燃料への補助金撤廃などを充てる方針だ。
パリ協定に復帰するだけでなく、各国の目標強化のために「世界を主導する」という。「パリ協定は巨額の財政支出を迫り、経済成長にもマイナス」として国際協調に背を向けるトランプ氏とは正反対と言っていい。
バイデン氏としては、気候変動対策を強く押し出すことで、「グリーン・ニューディール」を掲げて予備選を戦ったバーニー・サンダース上院議員やエリザベス・ウォーレン上院議員ら急進左派の支持を取り付け、民主党内の統一を図る狙いもある。急進左派の主張をのんでシェール業界に対する規制が強化される可能性も高い。
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