迅速な結果判明がウリ「日本製」PCR装置の実力 全工程を自動化し、感染リスクを軽減

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プレシジョン・システム・サイエンスが発売した全自動PCR検査装置の内部。他人の検体が混ざったり、取り違えるトラブルが起こらないように設計されている(撮影:梅谷秀司)

日本の新型コロナウイルス感染症対策の「アキレス腱」になってきたのが、遺伝子を増幅・解析して感染の有無を判定するPCR検査だ。医療の現場では、検査能力の不足により、入院患者受け入れ時の陽性・陰性の判定に日数を要する事態が続いている。とりわけ厳しい状況に直面しているのが、交通事故や心筋梗塞など重症患者の救急医療を担う地域の中核病院だ。

院内感染を防ぐためにも、すべての救急入院患者を対象にPCR検査を実施して患者を区分けする必要がある。その一方で、保健所や民間検査会社を通じて結果が判明するまでに2日程度かかることもあり、コロナに罹患しているかどうかがはっきりしないまま重篤な患者を受け入れるケースが少なくないのが実情だ。

そうした問題の解決に、新たに保険適用されたPCR検査装置が一役買おうとしている。装置は日本製であり、安定供給の面でも優れたもの。そして、検体の取り違えが起こらないうえに検査技師の感染のリスクを大幅に軽減できる「全自動工程」がウリだ。検体をセットしてふたを閉め、装置を作動させてから検査結果が判明するまで2時間半。従来の手作業中心の場合と比べて約半分の時間で済むのも強みだ。

医療現場が待ち望んでいた製品

画期的な検査装置を発売したのは、東証マザーズ上場で医療機器メーカーのプレシジョン・システム・サイエンス(PSS、千葉県松戸市)。医療現場から「まさに待ち望んでいた製品」だと評価する声が上がっている。

PSSと同じく松戸市内にある松戸市立総合医療センターは、2020年8月に同社の全自動PCR検査装置「エリートインジーニアス」を導入した。一度に検査できるのは最大12人分。検査試薬はフランスのエリテック社製で、PSSは自社開発のPCR検査装置および核酸抽出試薬とセットでの国内総代理店の役割を担う。

松戸市立総合医療センターが導入したPCR検査装置「エリートインジーニアス」(筆者撮影)

松戸市立総合医療センターの烏谷博英病院長は、「保健所ルートでは検査結果が判明するまでに2日かかるうえ、民間の検査会社に委託した場合でも、結果が出るのは早くても翌日の夕方。それだけに、結果判明までの時間短縮につながる新たな検査装置が発売されたことを知って、ぜひとも導入したいと思った」という。現在、同センターでは約30人の検査スタッフが順番にトレーニングを実施中で、「2020年10月初めにも装置を本格稼働させる」(野呂昌弘・臨床検査科部長)という。烏谷病院長は「当面は救急患者向け新型コロナの院内検査に活用し、その後は多少時間に余裕のある手術前患者のPCR院内検査でも使用していきたい」と意気込む。

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