「新型コロナは制御可能」が今夏の経験の結論だ 大阪大・大竹氏「的を絞った対策で乗り切れる」

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スポーツジムは、利用者のマスク着用や検温、人数制限、マシンの間に設けられたパーティションなどの有効性が高く、営業再開が順調に進んでいる(写真:山陽新聞/共同通信イメージズ)
7月に始まった新型コロナウイルス新規陽性者の再拡大は、約1カ月を経て収束に転じた。懸念された重症者の増加も一定程度に抑えられ、国民の新型コロナへの見方も徐々に変わりつつある。
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の構成員である大阪大学大学院経済学研究科の大竹文雄教授は、ウイルス流行当初からの変化をどう見ているのか。心理学の研究成果を用いた行動経済学の視点を交えて話を聴いた(インタビューは8月25日に実施)。

3月は専門家と国民の危機感に相違があった

――今年3月から政府の専門家会議(7月に新型コロナウイルス感染症対策分科会に改組)へ参加されてきましたが、春の第1波から今夏の感染再拡大までにどのような変化を感じていますか。

初めて参加した3月19日の専門家会議は強烈に覚えている。当時は、国民と専門家の間で危機感の強さがまるで違った。一般に多くの人々は、中国・武漢発の新型コロナ流行はもう落ち着いたから、小中高の一斉休校措置を解除すべきだと話していた。

だがこの頃、欧州帰りの感染者が毎日10人くらい入国していた。専門家会議は、欧州発の感染拡大を押さえ込まないと大変なことになると、非常に強い危機感を共有していた。西浦博教授(京都大学大学院医学研究科)は4月に「行動制限なしなら42万人死亡のリスク」と話したが、3月の時点でも人工呼吸器がどれだけ足りなくなるかなどの推計値を公表していた。

――行動経済学者として、そのような状況をどう見ていましたか。

3月19日の専門家会議の発表資料には、主に2つのことが書いてあった。1つは、(先に感染拡大が起きた)北海道は落ち着いたということ。もう1つは、感染源のわからない陽性者が東京などで継続的に増加しており、大規模流行につながりかねないということだった。

人間には、自分の信じたいことの情報だけを見てしまう「確証バイアス」がある。だから、危機感を強調したいのなら、そちらをもっと強く書かないと国民には伝わらないと思った。会議後に尾身茂・副座長(地域医療機能推進機構理事長)にそのことを伝え、記者会見では危機感を前面に出してくださいと話した。ただ、書いたものを通じて国民に伝わる部分が大きい。全面的な修正ができなかったのは残念だった。

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