「新型コロナは制御可能」が今夏の経験の結論だ

大阪大・大竹氏「的を絞った対策で乗り切れる」

――春に大打撃を受けた経済の立て直しも急務です。

コストとベネフィットの比較考量が重要だと思う。人の移動を完全に止めれば感染リスクが下がるのは当然だが、経済社会の悪化で健康を害する人もいる。世の中のリスクはコロナだけではないことを認識すべきだろう。確かに春の段階では、ウイルスのリスクがどの程度かわからなかったため、予防的に押さえ込んだのは正しかった。しかし、もうそこまでしなくてもいいのではないかというのが、今夏の経験の結論だろう。

新型コロナは、無症状者が感染源になったりするなど厄介な病原体だが、50歳未満では重症化リスクはほぼなく、それ以上ではあるなど世代によって随分影響が違う。加えて、重症化するとかなり長期間の入院が必要となり、医療資源を占有してしまうのも特徴だ。それによってほかの患者さんの医療を提供できなくなるリスクがある。だが、逆に言えば、これらのことにしっかり対処すれば、さほど新型コロナを恐れる必要はない。つまり、リスクの高いところに集中投資することが重要で、そうすれば経済との両立は可能ということだ。

――国民全体にまんべんなくではなく、的を絞った対策が重要ですね。

1つは、ウイルスの拡散源となる「夜の街」での対策。もう1つは、重症化リスクの高い人に感染が広がらないようにする対策。後者のためには、医療機関や高齢者施設などで予防用の設備や検査機器・体制に集中してお金を投じる必要がある。クラスター対策や検査などの業務でパンクしがちな保健所の体制強化も重要だ。

コロナ重症者用病床の確保にインセンティブを

――重症者用の病床確保策についても提言されていますね。

高リスクのところで対策を行っても、どこかで漏れが生じれば重症者は一気に増えかねない。重症者に対応する病床が不足することが医療崩壊を引き起こす最大の原因であるため、そこへの対応も不可欠だ。医療崩壊まで行ってしまうと、地域経済を止めざるをえなくなる。経済停止のコストを考えれば、コロナに対応できる病床を確保することのベネフィットの大きさがわかるだろう。

残念ながら現在は、コロナ対策用に病床を空けることと、ほかの疾患のために病床を空けることでは、後者のほうが医療機関の収益にとってメリットが大きい制度になっている。そのため、私は医療機関のインセンティブ構造を変える財政支援が必要だと提言している。

――コロナ禍によって受診抑制が起き、経営難に陥る町のクリニックも増えています。破綻が相次げば、地域医療の受け皿が毀損してしまいます。

そうしたクリニックになぜ患者が行かないかと言えば、感染症対策に不安があるからだろう。クリニックや医療機関が感染症対策をしっかり行うことを目的としてお金を使うべきだと分科会で議論している。経営危機だから一律にクリニックへ補助金を出すというのではなく、財政支援のあり方を考えるべきだろう。

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