新型コロナウイルスの感染を恐れての外来患者の激減が、地域の診療所に深刻な影響を与えている。中でも影響が大きいのが、小児科や耳鼻咽喉科だ。
東京・足立区の北千住駅前にあるミルディス小児科耳鼻科は、今までにない患者数の減少に見舞われた。平野浩二院長によれば、6月の診療報酬は小児科で前年同月比6割以上減少し、耳鼻咽喉科で5割も落ち込んだ。
「当院にはコロナに感染していると思われる患者はほとんど来院しない。にもかかわらず、医療機関に行くとコロナに感染するリスクが高まると思われたことで強烈な受診抑制が起きた」(平野院長)。仕事帰りの患者が増えてきたことで、7月には全体で前年同月比4割減とやや持ち直してきたものの、通院自粛の影響の大きさを物語る。
「それでも、もともとかなりの患者数があった当院はまだよいほう」と平野院長は指摘する。「当院については4~6月分の減収分を金融機関からの借り入れでカバーできた。だが、今のような状況が半年以上も続けば、多くの診療所が経営を維持できなくなるだろう」(平野院長)という。
風邪症状があっても受診抑制、小児科の窮状
東京・文京区の細部小児科クリニックでは、政府の緊急事態宣言が解除された翌日の5月26日、来院したのは予防接種の子ども2人だけで、保険診療の患者は1人も来なかった。「独立開業して12年になるが、こんな経験は初めて」と細部千晴院長は振り返る。
4、5、6月の診療報酬が前年同月比でそれぞれ59%減、69%減、43%減となった。患者が激減した理由について細部院長は「保育園の休園によって風邪をひく子どもが激減したことに加え、風邪症状があっても感染を恐れて来院を控える親が多いためだ」と説明する。院内では換気や消毒、患者が密にならないことを含めて感染防止対策を徹底しているが、いったん減った患者数は容易に元には戻らない。
小児科でとくに危惧されているのがワクチン接種の遅れだ。細部小児科クリニックでは4月の予防接種件数が4割以上も減ったという。
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