コロナ対策の金融・財政拡張でもデフレは続く みずほ証券の上野泰也エコノミストに聞く

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すでに学習塾の業界では、オンライン授業の導入によって価格の低下が始まっている(写真:Bee/Pixta)

デジタル化は最も大きなデフレ要因

――長年、経済のデフレ的な傾向を論じてきましたが、コロナ後の世界もこの傾向は変わらないと予測していますね。

コロナ以前からの経済構造として、デフレの要因は大きく2つある。グローバル化とデジタル化だ。グローバル化では、国境を越えて安い賃金の労働者がどんどん活用され、その結果、先進国でのインフレ率抑制が続いていた。

もう一つのデジタル化は、もっと影響力の大きな話だ。AI(人工知能)に代表される先端ITやロボットの活用拡大が雇用を脅かしている。経済が順調だったドイツの春闘でも、賃上げよりも雇用保障に労働者の関心が集まっている。賃金上昇圧力が高まらなければ、人件費が大宗を占めるサービスの価格は抑制され、結果、その影響が大きい消費者物価指数(CPI)もなかなか上がらないだろう。

デジタル化により、販売価格の最も安いお店を全国ベースで探すことも極めて容易になった。誰もがオンラインで手軽に注文し、宅配便で商品を受け取るという時代だ。当然、価格は安い方向へと収斂していく。

――日本は欧米よりさらにデフレ傾向が強いですね。

人口減少により、長期的に見れば、日本の国内需要は縮小方向だ。1990年代後半がピークだった。供給サイドでは、政府の企業支援策もあり、ゾンビ企業が生きながらえる傾向にある。過剰供給能力は温存され、中長期的な需給の緩みがデフレ圧力につながってくる。

――こうした状況は、コロナ禍によってどう変わるのでしょうか。

グローバル化とデジタル化では、それぞれに逆方向の風が吹く。コロナ禍は、国際分業や人の移動に打撃を与え、グローバル化を阻害する。そのため、コスト面からある程度の物価上昇圧力にはなる。

一方、デジタル化は逆に加速されるだろう。非接触化に伴う在宅勤務や経済のオンライン化などが「新しい日常」となり、ITリテラシーを高めてデジタルツールを活用しようという機運は高まる。デジタル化の拡大は価格を押し下げて、グローバル化阻害による物価上昇圧力を相殺し、全体としてデフレ圧力が勝るとみている。

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