コロナ対策の金融・財政拡張でもデフレは続く みずほ証券の上野泰也エコノミストに聞く

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――現在のコロナ危機対応の財政出動は、各国で異例の規模に膨らんでいます。これによるマネーの拡大が総需要を拡大させ、経済がインフレ傾向に転換する要因にはなりえませんか。

財政出動は、デフレスパイラルを防ぐところまでは機能する。だが、総需要減少による長期的な危機をも防いで、経済をインフレへ転換させられるかと言えば、それは現実より数ステップ上の話だ。コロナが完全に終息すれば、各国の財政出動も将来世代の負担増も考慮し、基本的には終了することになるだろう。

将来のインフレリスクを指摘する書籍も散見されるが、なかなか難しいのではないか。中央銀行の資金供給拡大が続いてもインフレにならないことは、過去10~20年間の日本や欧米の経験で証明されたと思っている。欧州の中央銀行では、資金供給拡大がインフレに直結すると唱える「貨幣数量説」への信仰が依然は強かったが、最近はそうした声がめっきり減った。

現在のマネー拡大は「守りの伸び」

マネーサプライは確かに日本でも足元で伸びが加速している。だがそれは、企業の自己防衛的な予備的資金需要や、特別給付金の支給によるもので、あくまで「守りの伸び」だ。そこからインフレには結びつかないだろう。

――一方で中央銀行の資金供給拡大は、実体経済のインフレではなく、株式などの資産価格インフレに結びついています。

株価は慢性的な「金あまり」を足場にした高値圏での不安定な上下動が続くだろう。米国では、ハイテク銘柄が集積するナスダック総合指数が上昇相場を牽引してきた。しかし、過去のITバブルと同様、それがバブルかそうでないかは、結局は後で振り返ってみないとわからない。

FRB(連邦準備制度理事会)を筆頭に世界の中央銀行は、インフレ率2%の目標を変えようとする意思がない。そのため、目標は達成できず、常に金融緩和しすぎの状態が続くことになる。実体経済で消化しきれないマネーは資産市場に向かい、株式や不動産などでミニバブル的な状況が今後何度も出てくるだろう。バブルが大きくなりすぎれば、どこかの段階で投資家の高所恐怖症が高まり、価格の下落が起きる。新型コロナウイルス関連のニュースをにらみつつの不安定な株価の上下動を、今後も覚悟しなければなるまい。

「週刊東洋経済プラス」では、会田氏と上野氏のインタビュー拡大版を掲載するほか、両氏の論点をわかりやすく整理・比較した図を総論で示しています。インタビュー拡大版では、MMT(現代貨幣理論)や米中デカップリング、コロナ後の国際政治・通貨体制の見通しについても言及されており、ぜひご覧ください。
野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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