日本銀行が7月に発表した「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)によれば、補習教育の5月の価格は下がった。これは、オンライン授業導入による値下げがあったためだ。オンライン化によって生徒の管理コストなどは下がる。すでに、デジタル化の拡大がデフレ圧力をもたらし始めている。
――コロナ禍によって、総需要が恒常的に抑制されるリスクはどう考えますか。
ウイズコロナとも言われるが、この戦いは数年単位の長期戦だ。ワクチン開発には時間がかかり、いったん抗体を獲得しても数カ月経つとかなりの量が減ってしまうという研究結果も欧州などで出ている。特に発展途上国や新興国は医療提供体制の整備が遅れており、その対応には膨大なコストと時間がかかるだろう。これらの地域の高い経済成長力がそがれる可能性がある。
コロナ後に総需要はベースダウン
先進国でも「新しい日常」によって、人々は外出を抑制するなど行動がシュリンクし、個人消費を中心に総需要のベースラインは切り下がるだろう。一方で、各国中央銀行は民間ローンを買い支えるなど異例の手法を使ってまでして、供給サイドを温存しようとしている。当然の帰結として、需給バランスは崩れ、一般物価の下落につながってくる。
――となると、総需要不足による経済危機を心配する必要はありませんか。
総需要不足から来る経済危機に対しては、政府は財政出動で対応する。中央銀行は通貨発行によって国債を大規模に購入し、政府の資金調達を支援する「財政ファイナンス」をすでに事実上行っている。従前のタブーはかなぐり捨てられており、各国政府は腹をくくって経済を支えると言っている。したがって、大幅な物価下落が止まらなくなるデフレスパイラルや金融危機は回避されると思う。
――危機は予防されるが、ダラダラとしたデフレ傾向が続くということですね。
欧米の人口動態は日本よりしっかりしており、ずっとマイナスの物価が続くことにはならないだろう。低インフレ状態が続き、原油などの動向次第でときどきマイナスになるといった具合だ。人口減少の影響が大きい日本は、その時々の要因に影響を受けながらも、マイルドデフレが続くと思う。
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