「増産しているのに、どうしてマスクが店頭に並ばないのか」
「いつになったら、マスクをいつものように買えるようになるのか」
ドラッグストア業界を読者とする、いわゆる“業界誌”である当社には、そんな質問が多く寄せられるようになった。
菅義偉官房長官は2カ月前の会見で「来週以降、毎週1億枚以上、供給できる見通し」(2月12日)とコメント。「3月は月6億枚超が確保される」(3月17日)と続け、同27日には4月の見通しとして、さらに1億枚以上を上積みできるとの認識を示した。
“いつもの風景”には当分戻らない
だが、それでも“いつもの風景”には当分戻らない。多少、生産・供給体制を増強したとしても到底賄いきれないほどの強烈な需要がしばらく続く見込みだからだ。
詳しく解説しよう。下図は、卸売業者の協力を得て作ったマスク流通の概念図だ。「製造」「卸在庫」「需要」「店頭在庫」「販売数」「家庭内在庫」などの流通量を縦軸で、時間経過を横軸で示した。
(外部配信先では図表やグラフを全部閲覧できない場合があるので、その際は東洋経済オンライン内でお読みください)
それぞれの状況を簡単に解説すると以下のようになる。
今、まさに店頭で見られる風景は時間軸のEに当たる。製造・供給が需要に追いついていないため、マスクが不足している状態だ。ちなみに、その少し前にはマスク販売が急激に伸びたが、その後、在庫がなくなったために販売数が急減していることも示している。
ここでマスクがどんどん増産・供給されれば、今の店頭風景は変わるのか。問題はそんなに単純ではない。
“店頭にいつでもマスクが置いてある風景”は、「店頭在庫」が十分にあるということを意味する。この図では、増産・供給すれどもすれども店頭在庫が高まるにはかなりの時間がかかることを示している。なぜなら、一般的な需要に、不安感からくる買いだめ需要が長い期間にわたって上乗せされると考えられるからだ。「家庭内在庫」である。
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