これは今回のトイレットペーパーの店頭在庫不足にも見られたように、モノはそろっていても、家庭内在庫が満たされるまで店頭での欠品が続く状態だ。家庭内在庫のニーズが強い分だけ、マスクはトイレットペーパー以上の長い期間にわたって、このタイムラグが生じる。
「今の需要自体が、平常時の10~30倍になっている。ここに家庭内在庫が上乗せされれば、30~60倍に需要が跳ね上がることも考えられる」。ある卸売業者は当分の間、品薄状態が続くことを懸念している。
自分の身の回りを見渡してみても、マスクをつけている人が普段の10倍以上になっていることは想像できる。平常時の月間マスク需要は、シーズンによって1億~4億枚といわれる。需要が10倍以上、家庭内在庫需要で30倍以上にも膨れ上がることを考えると、月間10億~30億枚が供給されても不足は解消されないことも想定できる。一部、報道されているように、中国からの供給が戻ったとしても、すぐさまマスクが普通に買える状態になるとは考えにくい。
ちなみに、足元の販売金額に関しては、3月30日の週で前年比32%増と前年を上回った。インテージFMCG事業本部小売・流通ユニットの古林紀彦氏はマスクの販売推移に関して、「急激な需要の高まりで供給が間に合わないことから、2月下旬からは前年を下回る週が続いたが、3月30日の週は前年比で昨年を上回り、供給量の回復が確認された」と指摘する。
じゃあ、どうしたらいいのか
つまり、増産・輸入増という供給サイドの施策では、“青天井”状態なのが、現在の国内のマスク事情ということになる。
では、どうしたら不足感は和らぐのか。
「供給サイドへの施策(増産)だけでなく、需要側での施策も有効だ」。卸売業者からはこうした構想が聞かれる。販売するドラッグストアなどで、できるだけ多くの人にマスクを販売する工夫が有効だという提案である。
具体的には、より多くの人にまんべんなく行き渡らせるために「1人1点まで」などの購入制限を加えることが挙げられる。こうすることで、特定の人にだけ供給が集中するリスクが低減できる。
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