「マスクの品切れ」が延々と続いている根本理由 多少の増産では爆発的な需要増に追いつけない

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マスクの販売方法については、今後もさまざまな工夫が検討されるだろう。

一部のドラッグストア経営者の間では、ドラッグストア企業がすでに構築している会員制度を活用して、まずは会員に対して「より広く」販売する施策も検討されている。

ドラッグストアの中にはアプリを介して会員に商品クーポンを配布する機能を有している企業も少なくない。この機能を使うことで、会員へ“マスク販売券”を配ることが可能だ。

アプリを積極活用していなくても、会員カードの発行はしている企業は多い。あくまで筆者のアイデアベースではあるが、例えば、1回目は会員番号の下1桁が1と2の人に限定して販売し、次は3と4の人……というように販売していくことなどもできる。

「会員を優先してマスクを販売するのは不公平だ」という批判も出そうだが、地域に暮らしている住民であることが確認できる分、少なくとも転売目的の集団を排除する効果は得られる。

ドラッグストア店員への負担は重くなっている

ただ、これらの施策にはドラッグストア企業側の業務負担が重いため、現況下で導入できるかは不透明だ。ドラッグストア企業でもパート社員が休校の影響で休暇を取るケースが発生しているが、緊急事態宣言下でもドラッグストアは生活のインフラとして営業を続けなければいけない。出勤している社員への負担が重くなっている状況だ。

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今後、いかなる施策をドラッグストアが投じたとしても、「不公平だ」という声が挙がるリスクをはらんでいる。絶対数が足りない中、満遍なく全員にマスクを販売することは不可能だからだ。

今は緊急事態だ。消費者側も、普段の「理想」を店頭に要求するのではなく、「現在の条件下での最善の選択」に理解を示していく姿勢を期待したい。

そして、今回の新型コロナウイルスは空気感染の可能性が否定はされていないものの、多くの場合、飛沫感染していることが知られている。その意味ではガーゼマスクも感染拡大予防に有効な手段だ。無症状であるケースも多いことから、すべての人が自分は感染者だと捉えてマスクをする意味も大きい。少しでも飛沫が飛ぶことを避けるため、手作りを含めてガーゼマスクを繰り返し洗濯しながら積極的に活用することも重要であることを書き添えたい。

菅原 幸子 医薬品業界誌記者、『ドラビズon-line』編集長

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すがわら さちこ / Sachiko Sugawara

2000年から20年にわたって医薬品メーカー、ヘルスケア卸、薬局・ドラッグストアを取材。現在は「ドラビズon-line」の編集長を務めている。

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