ポストコロナ「日米同盟に見えた大きな課題」

一段強化と依存できない分野の自立が必要だ

アメリカ軍内部での感染拡大は、インド太平洋地域におけるアメリカ海軍のプレゼンスに空白を生んだ。今年3月に最初の感染者が出た空母セオドア・ルーズベルト(TR)は、艦長を含む約1100人に及ぶ感染者と1人の死者を出し、約2カ月間グアムに停泊せざるをえなくなった。感染拡大によって定期的な共同演習等も中止や延期を余儀なくされており、それによりアメリカ軍の即応態勢の今後が懸念される。

TRの艦内での感染は、指揮系統にない政権の高官にメールで事態に関する情報を発信した艦長の更迭と、さらに即断で艦長の更迭を命じたことへの批判が集まった結果、海軍長官代行の辞任に発展した。

懸念される政軍関係の混迷は、黒人暴行死への抗議デモの鎮圧にアメリカ軍部隊の動員も辞さないとしたトランプ大統領とエスパー国防長官の政権内での対立や、マティス前国防長官の大統領への厳しい批判等によって、よりいっそう深刻化している。

下請け企業中心に軍需産業にも深刻な影響

アメリカ軍を支える軍事産業にもその影響は及んでいる。深刻なのはボーイングなどのプライム(完成機メーカー)が最終的に契約額の7割を依存する、下請け企業への影響である。これらの下請け企業はメキシコ、インドなど海外に多く所在し、エレン・ロード調達維持担当国防次官補は、4月20日、メキシコ政府に対しアメリカ向け軍需品の製造再開を要請した。

サプライチェーンの海外依存度は、航空機、造船、宇宙衛星の分野で高いが、すべての下請け作業をアメリカ内に移すことは不可能である。例えば、F-35ステルス戦闘機は米英伊等の9カ国が共同開発し、製造も各国が分担している。トルコが共同開発国から除外されたため、製造計画の遅れや部品供給の停滞がすでに問題となっていたが、共同開発国での感染拡大はF-35の供給網が持つ脆弱性を浮き彫りにした。

トランプ大統領はF-35に関し、「全部アメリカで作るべきだ。私が政策を全部変えてそうする」と述べた(5月14日)。アメリカ以外では最多の147機の調達を計画している日本にとって深刻な問題である。

いち早く感染を封じ込めた中国は欧米における感染拡大を自らにとっての好機と捉え、影響力の拡大を図ろうとしている。尖閣諸島では、5月8日から3日連続で中国公船が領海に侵入し、操業中の日本漁船を追尾する事態が起きた。3月後半には紅稗(ホウベイ)型ミサイル艇が東シナ海で4日間の実弾演習を実施、4月には空母「遼寧」が5隻の艦艇を伴って初めて沖縄・宮古間を往復している。

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