各国は、新型コロナウイルスの感染者数・死亡率や経済という共通の成績表を前に政策総動員で対応しており、案の定、テクノロジーの活用はその重要な一部となった。震源地でありながらいち早く感染を抑え込み、マスク外交等の戦略的なポジショニングに転じることができた中国。その感染対策を支えたのは、徹底的な封じ込めを可能にした「健康コード格付けシステム」を搭載したスマートフォンアプリ、医療提供体制の逼迫を緩和したAIによる肺炎のCT画像診断支援ソフト、そして3メートル先にいる人の体温を人混みの中でも測定できるメグビーの顔認証技術と合わせた体温測定システムなどである。われわれは、ユヴァル・ノア・ハラリの言う「全体主義的な監視体制」を持つ中国のすさまじい実装力を目の当たりにした。
テクノロジー実装競争の鍵は官民連携
今回のコロナ禍におけるテクノロジー実装競争には3つの特徴がある。
1つは、感染防止、逼迫する医療資源の分配、ロックダウン下の非接触生活の実現など、テクノロジーが過去にない程に「切実」な課題の解決に使われたこと。
2つ目は、感染者の指数関数的な伸びや一刻を争う医療崩壊に対処するために「スピード」が重視されたこと。
3つ目は、国民全体を対象とした行動変容政策、隔離政策といったもののために、さまざまなテクノロジーが一部の人のためのものではなく、「全ての国民」を対象として使われたことである。政府にとってテクノロジーを使うことが国民の命を守るという最も重要な役割と結びつき、社会全体の課題となった。
しかし、テクノロジーを持つ主体は多くの場合、国ではなく企業である。また、企業はユーザー基盤という国民への素早いリーチ手段やテクノロジーを有効に使うための潤沢なデータを持っている。
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