従って、政府がテクノロジーを活用するには企業のパートナーシップが不可欠であった。特に、すでに膨大なユーザー基盤やデータを持つプラットフォームは頼れる存在だ。例えば、上述の中国の「健康コード」のQRコードアプリは、WeChat(ウィーチャット)やAlipay(アリペイ)内のアプリである。多くの国はグーグルのモビリティレポートの人流データを参考にし、また、陽性者との接触を通知する接触確認アプリ構築のためにアップルとグーグルからAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の提供を受けた。
日本においても、8300万人に即座にアクセスできるLINEが厚生労働省とアンケートを実施。外回りの営業職の発熱率が高いことなど、感染対策に役立つ重要な情報を炙り出した。
政府とプラットフォーマーの関係
政府にとって、プラットフォーマーは頼りになる存在である一方、とりわけ民主主義国家においてその関係性は時に難しい課題を突きつける。イギリスでは、政府による独自技術の接触確認アプリ開発を断念した。アップルの技術を使用しない限りiPhone使用者に対して期待した効果が得られないことが発覚したからだ。iPhone使用比率が世界の中でも高い日本では、グーグル・アップルの技術採用を決めたが、同社の提示した条件に合わせるため、急遽、調達方法を切り替えるなど混乱も生じた。プラットフォーマーとの連携は、政府の戦略が、選挙で選ばれたわけではない彼らの技術や方針に左右されるリスクを孕む。
ただ、企業もユーザーやその他のステークホルダーからの信任を得ないとサービスそのものが見放されてしまう。6月26日、フェイスブックは、広告主の引き揚げなどのプレッシャーを受け、トランプ大統領の発言を含む、ヘイトなど有害コンテンツのラベリング表示を行うことを発表した。
フェイスブックの件は、ユーザーの求める価値が、利便性だけに留まらず、Social Good(社会的利益)に拡大したことを示した。慶應義塾大学の宮田裕章教授は、今や絵空事や言い訳としてではなく「多様なSocial Goodに対して如何に貢献しているか示す」ことが企業に求められており、また、この「Social Good」の中心的テーマが、コロナ禍の前の気候変動から、パンデミックを経て人々の健康へ、そして最近ではアメリカでの人種差別問題を受けて人権へと拡大したことを指摘する。プラットフォーマーもまた、それを支える人々の利便性や価値の上に成り立っているのだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら