コロナに勝つ国と負ける国を分ける決定的要因

テクノロジーを現実に落とし込む力がカギだ

民主主義国家における国家と企業の難しい関係性を考えれば、中国のように強権的な国家が圧倒的な優位に置かれるようにも見える。しかし、企業や国民を権力による監視下に置くことができる国家だけが今回の実装競争を優位に進められるとは限らない。

例えば、同じく感染を抑えていると評される台湾。台湾でマスクの買い占めを防止するのに役立ったのは唐凰(オードリー・タン)IT大臣がリーダーシップをとって解放した在庫データを元に多数の民間エンジニアが開発した在庫マップのアプリであるし、国民は政府の携帯電話通信情報を使用した検疫システムにも理解を示す。台湾はSARSの経験を機に周到な準備を進め、効率的なガバナンスと透明性の確保によって国民の信頼を得ながら各種のテクノロジー実装を進めている。

【2020年8月4日11時18分追記】検疫システムに関わる上記の記述に正確を期すため、初出時の表現を一部見直しました。

民主的な「実装力」の鍵は国民からの「信頼」だ。信頼は、テクノロジーは目的ではなく達成すべき政策課題解決のための手段であり、それが国民にとって必要なものであるとの理解あってこそ実現する。未だに各国で導入率が進まない接触アプリが実効的に機能するかどうかは、その目的と便益が、そして便益に伴うプライバシーなどのリスクがユーザーにとって納得感があるものとなるか否かにかかっている。

この競争を形作るのは「テクノロジーの社会実装力」

政府と企業は対話を通じて実装の目的となる社会的な利益を共有し、その実装の透明性を高めて国民の信頼を得る。このような実装方法が民主主義国家における理想的な官民連携の姿ではないだろうか。

コロナとの戦いが長期化する中で、まだ最終的な勝敗は見えていない。しかし、この競争を形作るのは間違いなく「テクノロジーの社会実装力」というパワーだ。この戦いにおいて、民主主義の国が取りえる道は、健康・国民の命を守る社会的利益の実現という目的において、官民が国民の信頼を得ながら実装を進めることである。

(向山 淳/アジア・パシフィック・イニシアティブ主任研究員)

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