日本のデジタル敗戦の挽回に必要な3つの視点 優秀な人を集め社会全体のDXをリードせよ

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司令塔のデジタル庁をどれだけ機能させられるかがカギだ(写真:Graphs/PIXTA)
米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。
独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。
前回前々回に続くデジタル庁をめぐる地経学の3回連載の最終回をお届けする。

デジタル敗戦を繰り返さないために

「デジタル庁は、強力な司令塔機能を有し、官民を問わず能力の高い人材が集まり、社会全体のデジタル化をリードする強力な組織とする必要があります」

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菅首相は9月23日のデジタル改革関連閣僚会議でこう語った。

今まさに政府のデジタル庁準備室で法整備が進んでおり、アイデアボックスで国民の意見を募るなど今までにない試みも行われている。しかし、デジタル庁が成功するかどうかは、この「強力な司令塔機能」を発揮できるか否かに尽きる。

そのためにはどうしたらいいか。私見ながら以下の3点を指摘・提案したい。

① 司令塔機能の目的を日本社会全体のDXとする
② デジタル庁を各省より高い位置づけにする
③ 最先端グローバル人材を確保するためデジタル庁を公務員の特区にする

第1に、国家サイバー・パワーの中核を担うデジタル庁の創設目的は日本社会全体のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を果たすのが望ましく、決して、省庁の行政システムの調達の一元化だけにとどまってはならないという点だ。

先進国各国においてデジタル庁同様の組織は多くあるが、その目的や権限はさまざまだ。イギリス・キャメロン内閣が2013年に立ち上げたGovernment Digital Services(GDS)は過去の政府のシステム調達の失敗を反省し、徹底的なユーザー目線、アジャイル開発の実現、オープンな組織風土で、先進的に行政サービスのデジタル化を進めている。GDSはさまざまな面で日本にとって見本になる一方で、その主目的は「政府の」デジタル化にとどまっている。

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