組織の設置場所はもちろん大事であるが、結局、最後にそこに命を吹き込むのは人である。次の時代を決する日本のDXに心血を注いでくれる優秀な民間人が集まる組織をどう作ればよいのか。そこで第3に挙げたいのが、デジタル庁を公務員の特区にしてはどうかという点である。
そもそも日本のIT人材は7割がITベンダーに所属しており、ユーザー企業に雇用されているIT人材は3割程度である。アメリカ、ドイツ等の欧米諸国は約6割前後がユーザー企業に雇用されているのと比較すると日本は開発を受託する側に既存の人材が寄っている。
また、データ・サイエンスを専門としている学生の母数が少ないなど、主体的に付加価値を創造し国際競争力を持つ専門人材の基盤が弱い。筆者が今年8月まで1年間行ったIT業界へのヒアリング調査においては、年功序列の弊害として若いうちからプロジェクト・マネジメント経験をしている人材が少ないという声も多く聞かれた。世界に誇れるアーキテクチャーを設計したい、と思ったとき、日本でそれができる人材は現時点では極めて少ない。
画餅に終わらせず、実効的なデジタル庁を
デジタル庁にそういった一握りの優秀な人材を着実に招き、人材が極力、霞が関の論理での制約を感じず目的を達成できる環境を提供し、そして、さらにこれをIT人材の裾野を広げる人材育成の好機と捉え、自由な開発環境の中で率先して最新のテクノロジーを試し、日本最大のプロジェクトに取り組む機会を与える。
長期的な人材育成の面からも組織の中に開発・運用ができる部隊を持ち、むしろ今後はデジタル庁から優秀な人材を民間に送り出すような流れを作り出すことが、まさにデジタル庁が日本の成長の柱を生み出すことになる。
目的、組織、人材について、妥協せずに検討し、絵に描いた餅に終わらせず、実効的なデジタルの司令塔を設置し、敗戦を繰り返さないようサイバー・パワーの時代を戦えるか。今がその勝負のときだ。
(向山 淳/アジア・パシフィック・イニシアティブ主任研究員)
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