日本のデジタル敗戦の挽回に必要な3つの視点 優秀な人を集め社会全体のDXをリードせよ

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一方で、「社会全体の」DXを志向する国もある。例えば、シンガポールでは首相府のSmart Nation and Digital Government Officeが政策企画を行う主体がブレーンとなり、社会全体のキャッシュレス化やデータ活用などの国家のスマート化施策を検討。Government Technology Agencyが執行部隊として民間連携、デジタル人材の育成、個人や企業に関わる行政サービスのデジタル・ツールの提供を行う。シンガポールの監視社会的アプローチへの賛否は別として、組織目標が国全体を向いている点で参考になる。

一方、日本のデジタル庁の目的はどこにあるのだろうか。

バラバラなままのデジタル戦略では勝てない

内閣官房IT総合戦略室が各省庁のシステム調達を審査・管理できずシステムがバラバラであることをはじめとした予算や仕様などの小さな範囲での縦割りの排除だけではなく、今、必要なのは、産業のDXやキャッシュレスは経産省、教育のデジタル化は文科省、マイナンバーは総務省、地方は地方、など縦横バラバラに企画立案し整備してしまっている国全体のデジタル戦略を、メタレベルで一元的に考えられる組織だ。

とくに、前回「日本がデータ活用大国になるための3つの視点」(2020年11月9日配信)でも述べたサイバーセキュリティーとデータ戦略は一気通貫でない限り、まったく意味をなさなくなってしまう。土台となるプラットフォームのアーキテクチャーやインフラを「デジタル公共財」としてしっかり政府が整備し、民間がそのプラットフォームを活用して社会全体のDXを進める必要がある。

インドでIndia Stackと呼ばれるデジタル・プラットフォームを開発する非営利団体iSpirtのアナンダラム氏は、当該プラットフォームの公共性を「道路」にたとえている。

「エンドユーザーは、ここで提供される公共財を、企業や自治体といったサービス提供者を通じて、間接的にそれを利用することとなります。企業は、このプラットフォームを利用して、顧客やパートナー企業のために新しいサービスをつくり自由にイノベートすることができます。言うなれば、プラットフォームは道路のようなものです。それを提供するのは国ですが、そこを走る『車』は、交通法規にしたがっていれば、誰もが自由にデザインし、走らせることができるのです。そして利用者である国民は、その『車』を使って自分の行きたいところに行くことができるのです」(G20 Japan Digitalより)

新しい成長戦略の柱として、国家のサイバー・パワーを強化するためには、「社会全体のDX」を明確に目的とし、強固な道路を作ることが必要だ。

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