バイデン政権の関税やWTOへのスタンスは?
11月3日に行われたアメリカ大統領選挙は、バイデン前副大統領が勝利をおさめた。異色の大統領トランプ氏は、貿易ではタリフマンと自称し、ゼロサム的な貿易観に基づき単独で関税を多用。気候変動政策も温暖化そのものを軽視し就任早々にパリ協定から離脱した。今後バイデン政権はこれら分野でどのような政策をとるのだろうか。日本はいかに対応したらいいだろうか。
バイデン政権は、一方的な関税引き上げには抑制的な立場を取るだろう。中国に対する通商法301条に基づく追加の関税には慎重だと思われる。しかし、すでに中国に課している関税はすぐに引き下げず、中国との交渉材料に使う可能性がある。また、通商拡大法232条に基づき安全保障を理由に同盟国にも課している関税は、早期撤廃が期待される。
ただ、今回の選挙でも確認されたラストベルト(アメリカ中西部)の政治的重要性から、鉄鋼への関税は継続してアルミだけ解除する、あるいは、両方解除する代わりに輸入割り当てを課すと予想する専門家もいる。本件は、同盟国重視というバイデン氏の主張がどれだけ真剣なものかを示す象徴的意味もあり、注目される。
トランプ政権はWTO(世界貿易機関)上訴委員会の委員任期後の補充を認めずにその機能(新規上訴の受け付け)を昨年12月に停止させたが、バイデン政権はこれを解消し、WTOの紛争解決機能を回復させることが期待される。アメリカは、WTOの紛争解決が法解釈を超えた立法機能も果たし権限踰越(ゆえつ)と問題視している。必要な改善を行いつつ、アメリカがWTO紛争解決機能の再開に協力できる状況を早期に形成する必要がある。
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