菅政権「経産省内閣の終焉」で今後起きること 官邸で権勢誇った今井尚哉首相補佐官が退任
9月16日、菅義偉政権が発足した。安倍晋三前首相の辞意表明からわずか3週間弱でのバトンタッチだが、新政権は早くもデジタル庁創設など「縦割り行政の打破」の取り組みで独自色を打ち出しつつある。
菅新政権の誕生により、今後の経済・財政政策はどうなるのか――。それを占うとき、行政改革・規制改革の取り組みとともにもう1つ、見落とせないポイントがある。「経産省内閣の終焉」という側面だ。これは、世間一般にはなじみが薄いものの、政策決定の現場において極めて大きなパワーバランスの変化が起きることを意味する。
安倍政権を牛耳った官邸官僚の退出
第2次安倍政権では、経済産業省出身の今井尚哉・首相補佐官兼首相秘書官が、安倍首相の最側近として7年8カ月の期間中、ずっと君臨し続け、内政や外交において数々の政策を主導した。同じく経産省出身の佐伯耕三首相秘書官や、政府の未来投資会議や全世代型社会保障検討会議を仕切った新原浩朗・経済産業政策局長なども安倍官邸を動かしていたため、経産省内閣と呼ばれていた。
菅新政権の下、今井氏、佐伯氏はともに首相補佐官や首相秘書官から退任した。今井氏は内閣官房参与に就くものの、「あくまで形式的なもの。彼らの影響力は格段に落ちる」と菅首相周辺は異口同音に語る。
アベノミクスといえば、まず思いつくのは、インフレ率2%を目指した大規模な量的金融緩和(日本銀行による国債爆買い)だが、こうしたリフレ政策を政権内で主導したのが、ほかならぬ、今井氏ら官邸官僚だった。
当初、リフレ政策をめぐっては、「大規模な金融緩和政策のみによって昔のような経済成長路線に戻ることは可能だ」と唱える経済学者の意見が目立ったが、こうした主流派経済学の教条主義とは無縁の今井氏らは、財政健全化を無視した財政政策拡大についてもデフレ脱却のツールとして積極的に使う姿勢だった。
その後、金融緩和のみでは経済成長路線への復帰は無理だとわかると、リフレ派の経済学者も「金融政策とセットで財政出動が必要だ」と主張を方向転換。これが援軍となって、今井氏らは2度にわたる消費増税の延期(2014年11月、16年6月に決定)を安倍首相に進言した。
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