菅政権の「勘違い」が地銀を殺しかねない理由 銀行が抱える問題は「多すぎる」ことではない

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日銀の政策は地銀にどんな影響を与えてきたのか(写真:ロイター/Kim Kyung-Hoon)

地方銀行における金融危機は、菅義偉新首相が直面することになる危険な状況の1つである。特に、新型コロナウィルスを原因とする景気悪化が長引いた場合はなおさらだ。コロナ前でさえ、麻生太郎財務相は全国地方銀行協会主催の新年パーティーで、「今後2年以内に地方金融が危機的な状況に陥る時期がやってくるだろう」と話している。

5月に日本銀行(日銀)も金融システムレポートで、「国内外の金融システムでは、今回の感染拡大が生じる以前から、低金利長期化のもとでの利回り追求行動に起因するさまざまな脆弱性が蓄積されてきていた。(コロナによる)実体経済の大幅な落ち込みが長期化する場合には、それらの脆弱性を通じて金融面の本格的な調整に結びつき、実体経済・金融の相乗的な悪化につながる可能性がある」と警告した。

エコノミストの多くは、景気がコロナ前の水準に戻るまでには2~4年かかるだろうと見ており、このシナリオが現実のものとなる可能性は高まっている。現在パソナグループの会長を務める竹中平蔵氏は「このまま行けば一部の地銀が破綻に追い込まれるのではないか」と懸念している。

菅首相が考える銀行が抱える「問題」

残念ながら、菅首相は脆弱性の根幹の1つから目を背けている。日銀のマイナス金利政策だ。銀行の貸出金利が非常に低いため、銀行は中核事業である預金の取り込みや、融資の実施で損失を被っている。

事実、銀行が預金に対してまったく金利を支払わないとしても、職員の給料や電気料金、IT経費、そのたの日常的に発生する運営コストをまかなうのに十分な利益を得られないだろう。残念なことに、菅首相はこのことについてロイター通信から質問を受けた際に、マイナス金利政策の影響を重要視しなかった。その代わりに、最大の問題は「地銀の数が多すぎること」と反論し、地銀の合併や規模縮小を訴えた。

これは言い逃れである。たとえ必要だとしても、規模縮小は根本的なジレンマを解決するものではない。日銀は1995年以来、金利を次々に引き下げてきた。今日、すべての融資の5分の1が0.25%未満しか金利を課しておらず、37%が0.5%未満である。1%未満の金利は全融資の70%に及ぶ。20年前は金利0.5%未満の融資などほぼ聞いたことがなく、1%未満もほとんどなかった。

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