菅政権「経産省内閣の終焉」で今後起きること 官邸で権勢誇った今井尚哉首相補佐官が退任

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菅政権が、小泉純一郎政権時代のような構造改革路線や緊縮財政へ戻ることはありえない。言うまでもなく、性急な金融・財政政策の引き締めは、経済にとって危険だ。菅政権も日本銀行の大規模金融緩和の継続などを表明している。

ただ、安倍政権の後半以降、「紙幣はどんどん刷ればいい」といったノリで、たがが外れつつあった財政への姿勢については、今井氏らの退任によって正常な状態に戻ることになりそうだ。

財務省幹部は、「規模を追うことを目的とせず、小回りの利く予算を目指したい。さすがたたき上げの菅首相、脇の締まった予算だと言われるようにしたい」と語る。

経産省内閣とは何だったのか?

安倍前首相の突然の辞意表明直後、官邸内では今井氏らが生き残りを図る動きに出たという。安倍氏を経由した人事的な働きかけのほか、新原氏らが新政権発足直後のタイミングで未来投資会議を開催して影響力を既成事実化しようとしたことなどがささやかれている(会議開催は断念)。

7年8カ月にわたって権勢を誇った「経産省内閣」だが、その実、経産省が組織の戦略として行っていたものではない。また当然ながら、法制度的な変更による権力のシフトが起きたわけでもなかった。安倍前首相との個人的な関係という人事的な側面の強い権力体制だったといえるだろう。

現在、菅首相の政策ブレーンとしては、最低賃金引き上げを提言するデービッド・アトキンソン小西美術工藝社社長や、慶應義塾大学名誉教授の竹中平蔵氏などの名前が挙がっている。今後は今井氏らの影響力が縮小するため、従来的な各省庁の持つ政策ブレーン機能も復活していくだろう。マクロ経済運営では、財務省と内閣府を中心とした元の勢力バランスに回帰していきそうだ。

野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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