菅政権「経産省内閣の終焉」で今後起きること 官邸で権勢誇った今井尚哉首相補佐官が退任

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こうした今井氏らの政策決定過程を、安倍官邸で内閣官房長官を務めた菅首相は間近で見てきた。だが、その波長は決して合っていたわけではない。

よく知られるように、菅首相は「自助」が大好きだ。高校卒業後、上京して工場で働き、大学を卒業した後は会社員、政治家秘書、横浜市会議員を経て国会議員になった。菅首相をよく知る官僚幹部は「生き様として、まずは自分でやれという強いものを持っている」と語る。

前政権は、安倍首相や麻生太郎副総理を筆頭に、華麗なる政治家一族の出身であるエリート内閣の趣が強かった。しかし新体制では、主軸となる菅首相、二階俊博自民党幹事長ともに世襲ではなく、たたき上げの政治家だ。

ばらまき財政型から自助支援型へシフト

過去に菅首相が注力した政策では、ふるさと納税やコロナ対策「Go To キャンペーン」などは内容そのものへの批判は強いものの、「がんばった者に報いる」という理念では一貫している。今井氏らが主導したばらまき財政とは性格が異なる。

また、行政改革・規制改革担当相に起用された河野太郎氏は「国民や社会から見て新しい価値が生まれるような規制改革を行う」と語っている。中小企業や地方経済の活性化が課題となる中、菅政権ではニュービジネスを生み出す規制改革が志向され、助成事業でも設定された課題に取り組む事業者へ補助金を出すというスタイルが好まれそうだ。

菅政権にとって最初の大きな仕事は、コロナ対策をにらんだ第3次補正予算や2021年度予算の策定となる。今春の緊急事態時には、経済や金融システムの底割れを防ぐために大型対策は不可欠だったが、それにしても無秩序なばらまき財政に陥ってしまった感は否めない。菅政権は、今井氏ら官邸官僚の作った路線をどう仕切り直すかが問われている。

コロナ後も、交通系や宿泊・飲食業の需要は構造的に元に戻らない可能性が指摘されている。非常事態モードを続けるのではなく、新しいライフスタイルに沿った新産業創出や、教育を含めた人材流動化策へどうシフトするかが、菅政権にとってポイントとなりそうだ。

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