第2に、具体的に上記の目的を達成するために、デジタル庁は「各省より一段高い位置づけ」でなければならないだろう。
政府の行政組織で、縦割りを排して実効的な総合調整と政策立案機能の確保に成功した直近の例は、安倍前首相が2014年に内閣官房に設置した国家安全保障局であろう。その「政策の基本方針・重要事項に関する企画立案・総合調整に専従」するという役割と、直接、首相・官房長官等への情報提供を行う中枢との距離の近さが求心力だ。それを「庁」で実現するにはどうするか。
橋本行革による省庁再編以降、さまざまな「庁」が誕生した。例えば、こんにゃく入りゼリーの誤飲被害や中国冷凍餃子事件など各省に分断されて適切に対応できなかった消費者問題に一元的に取り組むために、2009年に内閣府の外局として誕生した消費者庁がそれだ。
消費者庁は、内閣府、公正取引委員会、警察庁、金融庁、総務省、法務省、厚労省、経産省、国交省という9省庁1委員会から権限と人員を移管する形で組成され、歴史に残る大改革と期待された。2008年にできた観光庁も「観光庁長官のリーダーシップにより、縦割りを廃し、政府をあげての取組みを強化」することが目的の1つだ。
ただ、いずれも「各省の外局」という立ち位置だ。
復興庁のような位置づけが望ましい
わが国の統治機構の図を眺めると、内閣の下に省が横並びで並び、その各省の下に金融庁、スポーツ庁、観光庁……などが連なる。ただ、1件だけ、「復興庁」だけは「省」と同じ立ち位置にある。これは、復興庁が各省の外局ではなく、各省よりも一段高い立場から企画・立案・総合調整を担う内閣直属の機関としてその設置法で内閣に置くことを定めているからだ。デジタル庁は、このような「各省より一段高い位置づけ」を目指すのが望ましい。
「小さく産んで大きく育てる」ことも理解できるが、懸念するのは小さく収まってしまうことだ。2007年に内閣府の外局であった防衛庁が防衛省に格上げされた際、政府は「防衛庁は、単なる『自衛隊の管理』のみならず、さまざまな政策の企画立案に携わる機会が増えており、すでにほかの『省』と同様の仕事をしている」と国民に説明した。システムの管理だけでなく、企画立案に携わる組織として、将来、省の役割を持つべく、せめて今の時点から各省に対して明確なリーダーシップを発揮できる位置に設置されることを期待したい。
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