日本が「デジタル敗戦」から脱するのに必要な策 国家サイバー・パワーの中核機能をつくれ

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いま、「国々の興亡」を決するのは国家サイバー・パワーになりつつある。地経学の時代、サイバー空間がパワー・ゲームの中心に躍り出てきた。そして、それがまた地経学のパワー・ゲームを激化させている。

2020年9月にハーバード大学ベルファー・センターは、国家のサイバー・パワーを測る指標「National Cyber Power Index 2020」を発表した。1位アメリカ、2位中国と続くなか、日本は9位とイギリス、フランス、ドイツなどの欧州勢にも後塵を拝している。

中国の進める「デジタル・シルク・ロード」(DSR)は、一帯一路構想の中でも重要な位置を占める。DSRでは、当初掲げていた5Gや光ファイバーケーブルなどのネットワーク機器やインフラ投資のみならず、データや研究施設、スマートシティ、大規模イー・コマース、スマホ決済などさまざまな分野で2013年以降170億ドル(1.8兆円)規模の投資が実行された。

これらの取り組みは中国が「サイバー強国(网络强国)」としてリーダーシップを発揮する国際戦略であるとともに、中国企業の成長戦略にも直結している。中国ほど政経一体的に運用できなかったとしても、日本が国を挙げてデジタル化を推進するにあたって、それをどう国家のパワーにしていくのか、国際的な文脈の中でどのようなポジショニングを取っていくのかという視点が欠かせない。

サイバー・パワーにおけるセキュリティーの観点

National Cyber Power Indexの調査チームは、各国はサイバーという手段を使って以下の7つの国家的目的を追求しているとして、それらを指標化して、包括的な国家のサイバー・パワーを評価している。

1. 国内のサーベイランス・モニタリング
(Surveilling and Monitoring Domestic Groups)
2. 国家のサイバー防衛の増強
(Strengthening and Enhancing National Cyber Defenses)
3. 情報環境のコントロールや操作
(Controlling and Manipulating the Information Environment)
4. 国家安全保障のための海外のインテリジェンス収集
(Foreign Intelligence Collection for National Security)
5. 商業的な利益や国内産業の育成
(Commercial Gain or Enhancing Domestic Industry Growth)
6. 敵対国のインフラ等の破壊や無力化
(Destroying or Disabling an Adversary’s Infrastructure and Capabilities)
7. 国際的なサイバー規範や技術基準などの定義づけ
(Defining International Cyber Norms and Technical Standards)

ここで挙げられている項目は、それぞれがサイバー空間で国際的な主導権を持っていくために重要な事項である。とりわけ、経済・社会のデジタル化、その先のデジタル・トランスフォーメーションを強力に推し進めるためには、すべてがつながるうえで必要となる「守り」、即ちセキュリティーへの対処は切り離せない。

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