また、デジタル全体での課題と同様に、サイバーセキュリティーにおける専門人材の不足も深刻だ。プロフェッショナルな世界で各国とコミュニケーションできる当該分野の専門家が継続して雇用され、組織に知見が継続して蓄積されるような体制をつくり、専門人材を育成していく必要がある。
自己への攻撃を防衛する役割を担う自衛隊・防衛省と、サイバー犯罪を取り締まる警察庁との協力をしながら、社会全体のサイバーセキュリティーの司令塔となる機能がデジタル庁に求められる。
「国力以上の外交力は発揮できない」
まずは「デジタル敗戦」の要因を分析し、狭義のデジタル・ガバメントで国民が利便性を感じることのできるようなデジタル・サービスを実現することが第1のステップである。自国民から行政サービスへの評価・信頼を得ないことには、その先には進めない。
ただ同時に、サイバー空間はグローバル空間であることを忘れてはならない。どのようなデジタル・トランスフォーメーションを進めようが、否応なしにそれは世界のサイバー・パワー・ゲームにおける熾烈な競争という地経学的な挑戦に応えなくてはならない。日本の政府には、国家サイバー・パワーという21世紀の最も死活的な国力を育成し、それを行使し、それを防衛する中核的統合機能がどこにもない。
ケネディ大統領はかつて「どの国も国力以上の外交力を発揮することはできない」と記したが、国家サイバー・パワー以上のサイバーセキュリティーの態勢を構築することはできないことを知らなければならない。
(向山 淳/アジア・パシフィック・イニシアティブ主任研究員)
(第2回に続く)
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