男泣き続出「バチェロレッテ」の結末に見た縮図 「男は戸惑い、女は絶賛」はなぜ起きた?

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このシーンに私は、ホモソ(同性同士の絆やつながり。ここでは、男性の絆から生まれる男性的社会)の縮図を見た気がして、震えました。中には萌子サマを擁護している男性もいたけれど、大多数は、萌子許すまじの大合唱。

対する萌子サマも、顔をこわばらせて、

「私の旅なんだから、旅の終わりは私が決める」

「私の結論は、私だけのもの」

と、「私」を連発し始めます。

これまで、一貫して相手の気持ちを思いやって発言してきた萌子サマが、集団攻撃にあってはじめて、自分の身を守るために牙をむいたわけです。
この「全部終わったあと」の一連のやりとりが、この恋愛リアリティショーの、最も「リアリティ」がのぞいた部分だったと言えるのではないでしょうか。

もしかしたら、中には「ともに戦った仲間を思いやって、怒った人」もいたかもしれませんが。過去、バチェラーシリーズの司会をしていた指原莉乃さんが、この回を見て「アフタートーク離脱してしまった。もうちょっと元気なときに見よ」とツイートしたのも、話題になりました。

残酷なまでに、私たち自身の価値観をあぶり出す

最終的には、最後まで残った男性の1人である杉ちゃんのファインプレイで、涙涙のフィナーレとなり、番組はなし崩しの「いい話」で終わりました。しかし、その直前までくり広げられた言い争いの後味の悪さは、ずっと心に引っかかったまま残っています。

このスタジオでのバトルシーンが流れたことで、それまでの物語が全部吹っ飛ぶくらいの下克上がありました。

17人と萌子サマ、そしてMC3人に対する人物評価が、最終回でがらっと変化したという視聴者も多かったようです。

このシーンで株を上げた人、下げた人。

このシーンの誰に共感し、誰に共感できなかったか。

どちらの気持ちもわかるよ、と思ったか、思わなかったか……。

見たら誰かと答え合わせしたくなるし、けれどもそれについて話すことは、おそろしいほど、自分を丸裸にされる。

出演者を評価したつもりで、実はその言葉がブーメランになって自分に返ってくる。

出演者を評価したつもりで、実はその評価は合わせ鏡のように自分を映している。

あらためて。

『バチェロレッテ』とは、残酷なまでに、私たち自身の価値観をあぶり出す、リトマス試験紙的な番組だったと思うのです。

佐藤 友美 ライター・コラムニスト

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さとう ゆみ / Yumi Sato

1976年北海道知床半島生まれ。テレビ制作会社のADを経て文筆業に転向。元東京富士大学客員准教授。

書籍ライターとして、ビジネス書、実用書、教育書等のライティングを担当する一方、独自の切り口で、様々な媒体にエッセイやコラムを執筆している。

著書に8万部を突破した『女の運命は髪で変わる』(サンマーク出版)、『道を継ぐ』(アタシ社)など。理想の男性は冴羽獠。理想の母親はムーミンのママ。

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