アップルやグーグルが「哲学」にお金を投じる訳 哲学をビジネスに「使う」ための実践的な方法

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③社員研修としての哲学対話

研修としての哲学対話は、実に多様な目的で行われます。コンセプト・メイキング、マーケティング・リサーチ、アイデア・ワーク、チーム・ビルディング、モチベーションの向上、コミュニケーションや人間関係の改善、意志決定、合意形成、批判的思考力の育成などです。哲学対話を用いたこうした研修の実施や個人コーチングは、哲学コンサルの最もポピュラーなスタイルといえます。

クライアントからは、「アジェンダが機械的に進行されるような会議では、まず行きあたらないような個人的な規範や価値観に触れられた」「同僚の意見や考えに、以前より注意を払うようになった」といった声も聞かれます。組織内のコミュニケーションの改善や相互理解の促進も、哲学対話の成果だといえるでしょう。

マネジメントの哲学的な知見を提供

④哲学の専門知にかんする講演や調査

このスタイルの哲学コンサルは、当該企業の事業や理念・目的にあわせて、適切な哲学的知見を提供するというものです。

『哲学はこう使う 問題解決に効く哲学思考「超」入門』(実業之日本社)書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。

たとえば、マネジメントやリーダーシップについての哲学的な知見を提供することで、企業はガバナンスの改善を計ることができるでしょう。哲学コンサルタントが、クライアントの希望や要望を丁寧に聞きほぐしながら、必要とされる哲学の専門知や理論をまとめていくことになります。

提供方法としては、少人数でのレクチャーを行う、報告書やステートメントに仕上げる、研修の一環として講演を実施するなど、さまざまです。あるいは、まず企業の事業やマーケティングに役立ちそうな哲学的知見を提供するための講演を行います。それとセットで、前述の哲学対話研修を組み合わせるという選択肢もあります。

こうすると、単にインプットを行うだけでなく、社員はそれを自らの業務や経験と照らし合わせて考える機会をもつことができます。このスタイルは、比較的オーソドックスで、ポピュラーな哲学コンサルのひとつだといえるでしょう。

以上のように、哲学コンサルは非常に広い射程と潜在性を有しているといえるでしょう。これまでは欧米での実践事例が話題をさらっていましたが、本邦でも哲学コンサルタントを起用する企業が徐々に増えはじめています。時代の急速な変化とともに、コンサルや社員研修も、その核心から変わらざるをえない状況が訪れつつあるのかもしれません。

堀越 耀介 東京大学UTCP上廣共生哲学講座 特任研究員

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ほりこし ようすけ / Horikoshi Yosuke

1991年生まれ、東京都出身。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。学術的な知見と、5000人以上に対する対話のファシリテーションの経験を融合させ、企業が課題解決や価値創造に取り組む活動を支援している。NECソリューションイノベータ株式会社、三井不動産株式会社、株式会社SBI新生銀行、株式会社LegalOn Technologiesをはじめとする多様な企業に対して、「哲学」と「対話」によって組織の潜在能力を最大限に引き出すコンサルティングを実施。株式会社ShiruBeでコンサルタント/上席研究員を務め、株式会社電通と研修プログラムの共同開発をおこなうなど、活動の場を広げている。著書に『哲学はこう使う――問題解決に効く哲学思考「超」入門』(実業之日本社)。『Forbes JAPAN』をはじめ、各メディアでも幅広く活躍する。

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