アップルやグーグルが「哲学」にお金を投じる訳 哲学をビジネスに「使う」ための実践的な方法
とはいえ、こうした先進的な事例は、まだまだ一部に限られています。一企業が「フルタイムで哲学者を雇用する」ことのハードルは、依然として高いのが現実です。現状では、哲学コンサルタントに外注の形で仕事を依頼するのが一般的だといえるでしょう。
哲学コンサルタントは、クライアントが新しい観点やインサイトを得られるよう、斬新で批判的な問いを投げかける専門家です。ここでも哲学思考がふんだんに使われています。
彼らは「問い」を武器にして、企業理念の構築や社員の動機付け、組織内のさまざまな対立の調停、ガバナンスやマネジメントといった多様な問題に切り込んでいきます。
「現状維持」よりも「変容」に重き
哲学プラクティスの専門家であるニューヨーク市立大学のルー・マリノフ教授は、「哲学者がビジネスで行うことの多くは、リフレクションの空間を創り出すことである」といいます。
彼によれば、哲学は「本当のこと」を追究するので、「現状維持」よりもむしろ「変容」に重きをおくのです。そのため、特定の目的達成に縛られがちな組織に、フレッシュで予想外の観点をもち込むことができる、というわけです。
マリノフ氏によると、哲学コンサルティングには、次の種類があります。
・倫理規定の策定と実行
・コンプライアンスの達成
・動機づけ面接の提供
・組織内コンフリクトの解決
・研修としての哲学対話の実施
・リーダーシップ・ガバナンス技術の伝達
これをよりわかりやすくすると、大きく分けて4つに分類できます。まずは、一番わかりやすく、古典的なものから説明しましょう。
企業には、自社事業が倫理的・法的に問題がないかチェックし、その方針を決めていく責任があります。哲学者は以前からこうした場面で活躍してきました。相談を求められれば、倫理学の専門知を土台としたアドバイスができるからです。
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