アップルやグーグルが「哲学」にお金を投じる訳 哲学をビジネスに「使う」ための実践的な方法

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現代では、職種、ニーズの多様化やⅠT技術の発達によって、実に多様なビジネスが生まれています。他方で、人権意識の高まりや企業の倫理的な責任が、急速にアップデートされているのもまた事実です。

こうした中で、倫理的・法的な側面を確固としたものにすることは、企業にとって死活問題といえるでしょう。自由で公正な取引、政治腐敗・贈収賄の防止、児童労働や差別の撲滅、ハラスメントの撤廃、情報の適切な管理など、あげればキリがありません。

こうした倫理規定を取りまとめることの重要性は、いうまでもないでしょう。しかし、積極的に紹介したいのは、実は残りの3つです。世界の名だたる企業は、もはや単に倫理的な責任や法令を順守すればよいという消極的レベルで活動してはいません。「それ以上」の部分、つまり積極的な「理念」の部分で勝負しているからです。

経営理念に学問的な裏付け

②企業のミッション・理念の構築

①のような倫理規定ではなく、企業のミッションや理念を構築し、学問的に裏付けるという仕事があります。当該企業が「自社事業を通して何を目指しているのか」について共に考え、深めていくことによって、それを言語化・再構成するのです。必要な場合には、企業側も基本方針や理念の変更を迫られることがあるでしょう。

その中で、哲学研究者が蓄積してきた緻密な研究成果を土台として、経営理念が根拠づけられ、学問的な裏付けを得られます。哲学の専門知と方法論を通じて、いわゆる「社長の哲学」「経営者の哲学」のようなものも、より精緻で説得力のあるものへと高めることができるのです。

哲学的な知見に晒されることによって、企業理念はより洗練された、普遍的なものへと深化します。過去の哲学者たちが紡いできた思想は、数百年、数千年のときをこえて繰り返し吟味され、評価されてきた、「いぶし銀」だからです。それは現代に生きる私たちの生き方や理念を説明し、補強する際にも大いに活用できるでしょう。

ここで哲学者の仕事となるのは、事業の目的や鍵になる概念をクライアントから引き出すこと、そしてシャープなものにすることです。そのうえで、それを批判的かつクリエイティブに構築し、言語化していくというわけです。

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