大学生バイト「違法状態で使われる」驚愕の実態 201人調査でわかった具体的な「賃金支払い」

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賃金の支払いについて、学生の意識も聞いた。1分単位でないにもかかわらず「特に何も思わない」という回答が過半数を超えていた。規定の単位時間以内の残業はタダ働きになってしまうことも当然のように受け止めているように見受けられる。こうした意識も問題だ。

東京労働局にこうした実態についての見解を聞いたものの、「全事業主に対して一律の指導や立ち入り調査は難しい」という見解で、「もし違法な状況があるなら報告してほしい」ということだった。

違法な状態を改善したいのならば、自分たちで声を上げるべきということだ。つまり、アルバイト学生が「行動する労働者」にならなければならない。

事業者側の問題点

労働条件通知書等の交付の実態について、厚労省の調査では受け取っていないケースが58.7%、ゼミの調査は18%である。法律で義務付けられている以上、全員が交付されている状況でなければならないはずだが、それが実行されていない。これが一番問題であろう。

記載内容にも改善の余地がある。例えば、有給休暇に関しては、多くの契約書には「労働基準法の39条に定めるところにより付与する」等とだけ書かれている。これはあまりにも不親切ではないだろうか。法律は労働者すべてが一律に把握しているものではない。

実際、私たちも法学部に所属していなければ目にも留めなかっただろう。法律何条に従うというような無機質な言葉ばかり並べて契約書にサインさせて、言われなければ何も伝えない。

例えば、雇用契約時に当人の労働条件で働き続けたら半年後何日間付与される予定など、誰でも理解できる文面としての記載や、厚労省が出している「有給休暇ハンドブック」の提示を義務化して、主張しやすい環境の構築や、労働者、事業主への周知を確実にすべきである。

賃金支払い単位時間については、前述のように1分単位でないことが即座に問題になるわけではないが、その単位時間に満たない労働時間を切り捨てることにつながりやすい。

実際に学生から、切り捨てられているという声が多くある以上、そのような企業が多数存在しているのは事実である。働いた分が支払われるような制度に変えなければならない。

このような問題をひとつずつ改善することが健全な労働環境整備の一歩になり、働きやすい社会の実現につながる。労働者の権利の自覚が重要だが、それには行政による啓発や事業者の情報提供義務の強化も必要だ。

(取材・執筆 川田圭佑・北村達也・下河内里紗)

立教大学法学部消費者法ゼミ

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細川幸一兼任講師が指導する消費者法ゼミ。消費者法に加え、消費者教育やCSR,エシカル消費を扱う。社会問題の分析ツールとして法律を理解し、大学での学びが社会につながっていることの実感を学生が持てるような学びを大事にしている。今まで、「居酒屋のお通しは断われるのか」、「閉店しない閉店セールは問題ないのか」などをゼミ生が調査し、社会に問題提起。

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細川 幸一 日本女子大学名誉教授

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ほそかわ こういち / Koichi Hosokawa

専門は消費者政策、企業の社会的責任(CSR)。一橋大学博士(法学)。内閣府消費者委員会委員、埼玉県消費生活審議会会長代行、東京都消費生活対策審議会委員等を歴任。著書に『新版 大学生が知っておきたい 消費生活と法律』、『第2版 大学生が知っておきたい生活のなかの法律』(いずれも慶應義塾大学出版会)等がある。2021年に消費者保護活動の功績により内閣総理大臣表彰。歌舞伎を中心に観劇歴40年。自ら長唄三味線、沖縄三線をたしなむ。

 

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