大学生バイト「違法状態で使われる」驚愕の実態 201人調査でわかった具体的な「賃金支払い」
さらにこのアンケート調査において、アルバイトをしている学生から労働条件通知書計10枚を手に入れ、内容を検証した。「法定通り・就業規則通り」などのみで詳しい内容が書かれていないものが多くを占めた。また、有給休暇について言及されていない、あってもその規定が理解しづらい文面もあった。
1分単位での賃金支払いが基本だが
労働基準法第24条(賃金全額支払い)で「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない(以下省略)」と定められており、この解釈から1分単位で支払うものとされている。
ただし、行政通達により、1カ月の時間外労働時間を計算するときに1時間未満の端数が生じた場合、30分未満の端数を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げることは事務簡便を目的として認められている。
アルバイトをしている大学生201人に対して、賃金の支払いについての実態を調査すると、アルバイトの賃金計算のさまざまな実態について聞くことができた(カッコ内はアルバイトの業種)。
● 15分以下で残業をしても残業代がでない(飲食)
● 塾で120分授業だが、集団ではなく個別授業のケースだと90分授業+30分事務給(最低賃金換算)として扱われてしまう(塾講師)
● 残業代が出ているかどうかなどが労働者にわかるようになっていない(販売)
● 準備と片付けの時間に賃金が支払われない(サービス)
賃金の支払い単位時間についても調査すると、1分にほぼ並んで15分単位が多くを占めた。中には30分単位という回答もあった。こうしたことが実働時間に対して、適正に賃金が支払われない原因であるように思われる。
ただし、15分単位等に区切って仕事をさせること自体は、適正に賃金が労働時間を反映しているのであれば問題ない。問題は労働時間の切り捨てである(例えば、14分残業しても15分未満であるとして賃金未払いなど)。
この写真は、1日の就業時間を15分単位で区切っているあるコーヒーショップのタイムカード記録だ。カッコの中の時間で実際に給料として支払われる。13時53分に出勤したはずが、14時00分に。22時49分に退勤したはずが、45分となり合計11分がなくなっている。
事業者サイドからすれば、「タイムカードの記録が実労働の開始・終了を適正に反映しているわけではない」ということのようだが、そうなると労働時間を把握する手段がなくなってしまう。上記の11分は店長の管理の下の実働時間だ。
アルバイトに有給休暇はない?
アルバイトにも、有給休暇は正社員等と同様に労働基準法39条によって付与される。「雇入れの日から起算して6カ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない」と定められている。
これは、正社員と同様に、基本的に週所定労働時間が30時間以上または週所定労働日数が5日以上のアルバイトにも適用される。学生の中にはそれに満たない人もいるだろう。そこで「比例付与」というものがある。
週所定労働時間が30時間未満で、なおかつ週所定労働日数が4日以下のアルバイトやパートに適用される。例えば、週所定労働日数が3日の場合、全所定労働日数の8割働けば半年後には5日の有給休暇が与えられる。
では実際に有給休暇を適切に使っているのだろうか。6カ月以上勤務する学生124人に取得経験の有無を聞くと、「ない」が74%、「ある」が26%という結果になった。
有給休暇はあっても取得経験のない人に理由を聞くと、次のような回答が得られた(2019年4月からは、10日以上の有給休暇がある労働者には5日間の有給休暇を取らせることを使用者に義務化)。
●4年生以外は、あまり取るなといった雰囲気がある
●有給を取れることは知っているけど、申請方法を知らない
●みんなが取っていないから、自分だけ有給を取る勇気がない
●有給が取れるのが知らなかった。取り方も不明