日本企業「滅びないため」して欲しい3つの質問 コロナが最後の危機と思ったら大間違いだ

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今回のことで企業は現代技術の流れに追いついていない自分たちの現実を、これまで同様に無視し続けることができなくなった。今回の危機は、多くの企業がより最新のIT機器を取り入れ、そうしたテクノロジーを利用するために社員教育を行い、よりテクノロジーに精通せざるを得ない状況を生み出した。

この傾向は日本の大学にも見られる。筆者は現在、上智大学で教えているのだが、今年の初めは学生の誰一人、ネットで授業を受けるなんてアイデアもなかった。が、この4月からオンラン授業を行った結果、誰もがすごい勢いでネットでの授業に慣れ、今では授業に参加するだけでなく、課題をこなすのもすべてネットでできるようになっている。

もちろん私自身は対面の授業を早く再開したいと思っているが、それでも学生がネットのみならず、新たなテクノロジーを使いこなせるようになることは将来必ず役立つと考えている。コロナ危機は、多くの企業にとってテクノロジー面での後押しとなったが、デジタル化は今回の危機が過ぎ去った後も続けていく必要がある。

今回が最後の「危機」ではない

3.次の危機への「備え」はできているか

今後待ち構える経済的問題は無数にある。コロナ危機は日本、そして世界経済の将来に影響を与えていくだろう。現時点で、それが企業にとってどんな意味を持つのかは推測の域を出ないが、家計消費の減少や倒産企業の増加が予想される。

コロナ危機によって、企業は決して安全な立場には置かれていないのだという現実が浮き彫りになった。市場は変化するし、消費者もまた同様である。企業も経営者も、積極的に次なる市場機会を探し求め、新たなビジネスモデルを構築していく必要がある。

これは終わりのないプロセスであり、単純に起きる変化に応え、その時々で急速な成長を試みていたのでは生き残れない。私たちは皆、コロナ危機を通して、困難に適応することは可能だということを学んだ。企業に今必要とされているのは、コロナ後の時代にもこの先を見越した積極性を維持する姿勢である。

こうしたすべての要素においてもっとも重要なのは、各経営者、そして各組織が今回の危機から「何を学んだか」ということである。人それぞれ考えはあるにせよ、1つ明確なことは、過去の出来事に向き合ううえで、それを将来に前向きに生かしていくこと以上に賢明な手段はない。

過去と同じ概念や手法にしがみついていては、将来の成功は逃げていく。従来の在り方に引き返し、過去に戻ってしまったら、今回の危機は何も意味を持たなかったことになる。起きたことを理解し、そこからできる限りの学びを得て、新しいものを生み出していくことで、変化の激しい環境により堅実に備えられるようにしていきたいものである。

コロナ危機は、太陽光を1カ所に収束する天日レンズのように、私たちのあらゆる弱点をまとめて浮き彫りにした。恐れることなく、今後の私たち自身の在り方、業務手順、マネジメントスキル、そしてビジネスモデルを向上していくべく、強い意志を持ってそれに目を向ければ、今回の一連の難局も決して無駄にはならないはずだ。

パリッサ・ハギリアン 上智大学教授(国際教養学部)

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Parissa Haghirian

オーストリア・グラーツ生まれ。ウィーン大学日本学部卒業。ウィーン経済大学国際ビジネス学部で博士号取得。2004年に来日し、九州産業大学で国際ビジネスを教え始める。2006年、上智大学に准教授として着任。現在は、上智大学国際教養学部教授(国際経営・経済学コース)として、日本の経営学、クロスカルチャー、経営戦略などをテーマに研究・教育活動を続けている。

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