私たちに取れる最善のアクションは、この危機から学び、そこに何らかの意義を見出すことだ。積極的に問題に向かい合えば向かい合うほど、より堅実に状況を把握し、行動を取ることができる。そうすれば、何か新しいものを生み出し、前進する機会も生まれてくる。
その過程の第一歩が、分析と内省である。この観点から、コロナ後の世界に備えるために企業が自問すべき点をいくつか挙げてみたい。
「まさか」の取り組みが本業になる可能性
1. 自社のビジネスモデルは将来にふさわしいものか
緊急事態宣言が出されてから、生き残るために新しいビジネスモデルを考案した企業の例は多数ある。これは決して喜ばしいプロセスではなかったにせよ、企業が生き残る有効な手段にはなった。飲食業はデリバリー市場に参入し、ホテルは企業の従業員に部屋を貸し、会議運営業者はビジネスコンテンツのプロバイダーとなった。
例えば、中国の大手メディア企業、ホワンシー・メディア・グループ(歓喜伝媒集団有限公司)は、春節の時期、国内の映画館を閉鎖する事態に追い込まれた際、中国のストリーミング会社と手を組み、ネットで映画を配信した。両社の関係は今も続いている。
中小企業でもこうした取り組みは行われており、ドイツ・ベルリンで韓国食品を販売するフロイライン・キムチは、わずか1日でデリバリー事業を立ち上げた。創業者のローレン・リー氏がこの構想をフェイスブックで打ち明けると、直ちに250人が賛同した。また、オーストリアの会議運営会社、ビジネス・サークルはここ6カ月リアルな会議やセミナーを開催できていないが、ネット会議の運営ノウハウをコンサルティングする企業へと変貌している。
コロナを契機にオンラインビジネスに飛び込んだ企業は少なくない。今後はこうした予想もしていなかった、あるいは躊躇していた新たなビジネスが安定した収入源となり自社を支える可能性がある。ビジネスはそうして、次の危機により確実に耐えうる盤石なものとなっていくものだ。コロナ後も収益性の高い新たなアイデアを生み出し続けていくことができるのか、企業経営者はそう自問する必要がある。
2.「デジタル遅れ」になっていないか
コロナ危機は、テクノロジーの観点から見た企業の立ち位置についても、明確なメッセージを突き付けた。多くの企業が、自社のテクノロジーは時代遅れで、人の手による労働とやり取りが主となっているその業務プロセスは時間がかかり過ぎると認識したのである。
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