一口に「宗教」といっても、いろいろなものがあります。これまで当連載に登場してもらった中にも、親が宗教にはまって苦しんだ人もいれば、逆に親が宗教に救われていたという人もいました。同じ宗教の中にもいい面と悪い面の両方があったりして、なかなか一口には語れません。
ただ、家族と宗教のことで悩んだ経験を持つ人は、決して少なくないでしょう。今回話を聞かせてもらった白井道子さん(仮名、40代)も、親が信仰する宗教に自身も入信させられ、苦しい思いをしてきたといいます。
大人になって宗教を離れてからも、彼女が「怖くてカウンセリングに長く通った」のは、いったいなぜだったのか。「今は本当にスッキリしている」と彼女が言えるようになるまでに、何が必要だったのか。今思うことを、話してもらいました。
「教えに従わないと悪いことが起きる」という脅迫感
道子さんには、10歳以上年の離れた兄、姉がいます。道子さんの父親は前妻を病気で亡くし、子どもたちを連れて再婚したのです。その父と母の間に生まれたのが道子さんで、兄や姉は母からみて継子でした。母と継子たちの関係は、昔も今も悪くないようです。
母親が宗教に入ったのは、道子さんが小学3年生の頃でした。いわゆる新興宗教と呼ばれるもので、ここでは仮にA教と呼びます。
「入ったきっかけは、たぶん父親の糖尿病です。父はずっと入退院を繰り返していたので。母は(A教の)『儀式』が健康にいいというのを、どこかで耳にしたのかもしれません。母自身も当時、今思うとすごくイライラしていたので、精神的な安らぎを求めていたのかな」
母親が精神的に不安定だったのは、もしかすると継母としての苦労もあったのでしょうか。子連れ再婚家庭において、世間から突然「母親」の役割を果たすよう求められる継母は、とくにストレスが大きいと言われています。
10歳になったとき、道子さんは姉とともに、A教の「儀式」を行えるようになるための研修を受けさせられました。「儀式」とは、身体の悪い部分に対して行うと病気が治るといわれるもので、A教ではすべての信者がこの「儀式」を行うことになっていました。
研修内容はほぼ「神様の話」で、朝から夕方まで丸3日間行われたそう。値段は約3万円で、中級、上級と進むにつれ金額が上がっていく設定でした。
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