BLMと「協同組合大国アメリカ」をつなぐ点と線 「ウォール街を占拠した若者」が今取り組む仕事
プラットフォーム・エコノミーの新しい可能性に目を向ける人々が現れ始めた。だが単純にウーバーを模倣し、働く人に優しくした協同組合版ユニコーンになろうとしてもうまくはいかない。
ウーバーはシリコンバレーの特異なエコシステムの中から出てきた存在だからだ。生まれてまもないプラットフォーム協同組合の所有権の設計は、既存のネット企業のビジネスモデルにも、従来型の協同組合の慣習にも異議を突きつけるものだと著者は観察している。プラットフォーム・エコノミーに新たなエコシステムを構築するのは遠大な取り組みになりそうだ。
協同組合大国アメリカ
資本主義の代表格のように思われているアメリカは、実は協同組合大国でもある。
例えば、Visaは競合関係にある銀行同士の協調を可能にするために、銀行所有の協同組合として創設された。保険会社の起源は人々が自分たちでセーフティーネットを作ろうと結成した地元の友愛組織であり、大手ステートファーム保険は今も自動車保険の契約者が相互に所有する協同組合の形をとっている。
経済学者のブレント・ヒュースは、「見失われた市場」があるとき、つまり世間の主流のビジネスが満たされていない需要に応えたり隠れた供給を活用したりできていないときに、協同組合は最も発生しやすいとしている。
民主的に運営される協同組合という事業体は、トップダウンモデルの企業が手を出したがらない分野で真価を発揮する。
アメリカの農村の電化に大きな役割を担ったのも協同組合だった。1930年代、電化が進む都市部をよそに農村は長らく取り残された。電力企業が僻地の農家にサービスを提供しても十分な利益が上がらないとみなしたためだ。
スイッチ1つで明かりのつく生活を切望した農民たちは電力協同組合を結成し始め、自前の電線を引いた。彼らの自助努力に動かされ、1935年にフランクリン・ルーズベルト大統領がニューディール政策の一環として支援策を提案。協同組合活動を国策が後押しした。
同じ頃にアメリカ合衆国協同組合連盟の初代会長を務めていたジェームズ・ピーター・ウォーバスは、協同組合運動の向かう先に営利企業と国家に取って代われる社会構造の創造を夢見た。
いずれ人々は単一政府の国民ではなく、部分的に重なり合う複数の協同組合の組合員となる。連邦政府の一部の機能を協同組合の連合が担うようになる。ウォーバスはそんな理想を描いた。
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