誤解されたスウェーデン「コロナ対策」の真実 「集団免疫戦略」ではなく、「持続可能性」を重視

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以上のように、スウェーデンの特徴あるコロナ対応は、当初から新型コロナの影響が長期にわたると考えて持続可能な政策をとるという方針に沿ったものといえるが、その背景には、さまざまな制度や国民性がある。国民の移動の自由、専門家の意見の尊重、地方分権といった法律上の規定、共稼ぎ社会といった社会構造、政府に対する国民の信頼度の高さ、自主性を尊重する国民性などである。

海外の政策を見る際は、その背景を知る必要がある

ちなみに、スウェーデンの感染のピークは4月であり、ICUに入室する重症者数も死亡者数も多かったが、5月以降月を追って減少、死亡者も減少してきている。6月になってPCR検査が容易に受けられるようになったことで新規感染者(検査陽性者)数は一時的に増加したが、多くが軽症者である。最近は新規感染者も減少、横ばいの状況であり、8月中旬の現時点では第1波は収束してきているとみることができる。

われわれは、今後も粘り強く新型コロナウイルスと共存する生活を送らねばならない。有効な手立てを講じて国民の健康を守るためには、各国で実施されている政策についての知見を増やし、必要に応じて参考にしていくことも有益と思われる。しかし、その際には、その国の文化、歴史的背景、社会的資本、法制度や医療制度などの違いを多面的に研究して、誤解や思い込みを避ける必要がある。そのうえで、日本にとっての最善の在り方を検討、模索する必要があろう。

翁 百合 日本総合研究所理事長/ NIRA総合研究開発機構理事

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おきな ゆり / Yuri Okina

京都大学博士(経済学)。1984年日本銀行入行、1992年 日本総合研究所に移り、 2018年から理事長。この間、慶應義塾大学特別招聘教授、株式会社産業再生機構非常勤取締役兼産業再生委員、規制改革会議・健康医療ワーキンググループ座長 などを歴任。現在、未来投資会議・構造改革徹底推進会合「健康・医療・介護」会合会長、金融審議会委員 、総合研究開発機構(NIRA)理事 などを務める。内閣府「選択する未来2.0」懇談会座長。著書に『金融危機とプルーデンス政策』(日本経済新聞出版社)、『不安定化する国際金融システム』(NTT出版)、『国民視点の医療改革』(慶応義塾大学出版会)など。

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