スウェーデンのコロナ対応は、強制的なロックダウンは行わない緩やかなものであるが、社会的距離(ソーシャルディスタンス)の確保、50人以上の規模の集会や高齢者施設への訪問の禁止など、いくつかの規制もしくは順守事項はある。
日本と相違するところは多々あるが、日本で4月から5月にかけて緊急事態宣言が発せられた際にも、多くの欧米諸国が実施したロックダウンという強制的な対策をスウェーデンは採らなかった。国民の自主的な判断や行動に任せるという点では、日本と類似した手法が選択されているともいえる。
ロックダウンを行わなかったのは「集団免疫戦略」を採用したからだとの海外からの見方を、スウェーデン政府は閣僚のインタビューなどで明確に否定している。そして、感染拡大防止、医療崩壊の回避を目的としている点では諸外国と同様の対策であることを、対外的に強調している。
筆者がインタビューしたペールエリック・ヘーグベリ駐日大使も、ロックダウンをとらなかった理由は集団免疫戦略ではないと強調したうえで、今回の感染症には長期的な対応が必要になるとみて、国民・社会が長く耐えられる持続可能な対策を採ることにしたからだと説明している(ペールエリック・ヘーグべリ 駐日スウェーデン王国特命全権大使「国民の信頼に支えられるスウェーデンの感染症対策」<NIRA総研>)。
憲法の規定で国民の移動は禁止できない
さらに、政府がそもそも国民の移動を制限することは、憲法上できなかった点に注目する必要がある。個人の移動の自由に関しては、同国の憲法第2章「基本的自由及び権利」第8条 において、「すべての人は公的機関による自由の剥奪から保護される。その他、スウェーデン市民である者には国内を移動し出国する自由も保障される」と明記されている。
すなわち、平時の条件下で、国内および国境を越えたスウェーデン国民の完全な移動の自由を保障している。非常時における国民の移動制限が憲法の条文に入っていないのは、スウェーデンが1814年以降戦争を行っておらず、長く非常事態がなかったためとの指摘もある。
憲法が地方自治体に強い役割を与えており、分権化された社会となっていることも特徴である。
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