憧れの田舎暮らしで起きた「想定外」の非常事態 自宅農園で自給自足生活と張り切っていたら
やっぱり来たか――。フェンスを増強する決断をしなければ、今後も食害が続くことは明らか。1回か2回、葉を食べられた程度なら植物はまた再生するが、収穫量が減るのは必至だ。その日、ホームセンターに車を飛ばし、柵を増強する資材を購入した。
畑を柵でほぼ完全に囲い込み、高さも1.5メートル程度から2.5メートル前後に強化。この時点で、シカが柵を飛び越えて入ってきているのか、抜け穴から入ってきているのか、判然としなかった。ただ、十分とも言える強化策を講じたことから、これで大丈夫ではないかと安堵した。
シカはどうやって侵入しているのか
ところが翌朝、起きて畑を見て愕然とした。ブドウやプルーンの果樹は、枝をへし折るように葉が食われて丸裸となり、豆も軸を残して葉が完全に食われていた。今まで被害に遭っていなかったトマトやナス、シシトウ、パプリカ、オクラの葉も食べられてしまい、無残な姿をさらしている。
畑には、大量のシカの糞が散乱し、芽生えたばかりの人参やレタスが蹴散らされていた。「これでは食べるものがなくなってしまう。自給自足的な生活もままならないのではないか」と恐怖を覚えた。シカは一度、餌場と認識すると、隙があれば何度でも執拗に畑に侵入してくるようだ。
まさか2メートル以上もある柵を飛び越えたとは考えにくく、抜け穴があるのではないかと探したところ、針金でナイロン製の網を金属製のフェンスに結んでいた箇所に穴を発見した。シカが通れるほどの大きさに穴が広げられ、周辺には足跡もついていた。
その部分を強化した翌朝、再びシカが侵入し、インゲンの葉が食われる被害が発生。ナイロン製の網を地面に固定していたコンクリート・ブロックが跳ね飛ばされていたため、侵入した箇所はすぐに判明した。地面に丸太を置き、網を針金で固定する強化策を取って以降、ようやくシカが入ってこなくなった。
それでも、夜中に目を覚ますと、フェンス際をシカがうろうろしていることがあり、隙あらば入ってくる構えだ。山林を切り開いた耕作地は、フェンスで囲ったものの、下の隙間から入ってくるのか、種をまいたライ麦や雑穀、ごま、植えつけたリンゴの樹も全滅状態。クヌギの苗木も若芽がたびたびかじられ、育っていない。畑でのシカ対策に追われ、手が回らなかったのが実情だ。
シカの侵入を防いで平穏が戻った畑では、枝豆の葉が再び生えて実をつけ始めていたが、収穫間近となったトウモロコシが食害にあった。地元の人々の畑のトウモロコシも食い荒らされ、カゴ罠にハクビシンが入った。ハクビシンは、柵のちょっとした隙間から入ったり、支柱をよじ登ったりして巧みに侵入するため、現在の対策では防ぎようがなく、トウモロコシの収穫は諦めた。その後もサルが出没し、落花生やカボチャが食い荒らされた。
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