日本企業が紙文化の脱却だけでは戦えない理由 「DX推進」と大げさに言う人には見えていない

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DXではなく「ゼロトラスト」と「クラウド」こそ重要です(写真:metamorworks/PIXTA)
昨今の経済現象を鮮やかに切り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第24回。

DXとIT化はどこが違う?

「これからの企業経営にはDX(デジタル・トランスフォーメーション)が必要だ」ということが言われますが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って明らかにされた日本の現状を見ると、まず紙のシステムからの脱却が必要です。

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また、単にデジタル化するだけでなく、「クラウド化」する必要があります。これは、在宅勤務を進める際にも重要なことです。しかし、日本では、クラウドに対する偏見が強く、進んでいません。

経済産業省によれば、DX(Digital transformation)とは、次のようなことだとされています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

要するに、「ITを活用してビジネスを展開しよう」ということのようです。

そうであれば、格別目新しいことではありません。

「IT革命」ということが、1980年代から言われていました。

「IT革命はデジタル・トランスフォーメーションの一部でしかない」 とか、「IT化は業務効率化などを目的としてデジタル化を進めるのに対して、DXはITの活用を通じてビジネスモデルや組織を変革する」などと説明されるのですが、どうもよくわかりません。

それに、DXは2004年にスウェーデンのウメオ大学教授のエリック・ストルターマン氏が述べた概念だそうですから、最近生じている新しいことを表す概念でもなさそうです。

私には「ITという言葉は使い古されてありがたみがなくなってしまったので、DXという、これまであまり使われていなかった言葉を持ち出した」としか見えません。

ただし、日本が「デジタル・トランスフォーメーション」を実現していないことは、間違いありません。

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