日本企業が紙文化の脱却だけでは戦えない理由 「DX推進」と大げさに言う人には見えていない

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IT革命が始まってから40年近く経ったにもかかわらず、日本では、まだ紙に頼る情報処理が行われています。

とりわけ、企業で情報のデジタル化が進んでいないのが問題です。

また、官公庁に提出する書類はいまだにほとんどが紙です。したがって、個々の企業がデジタル化を進めても、社会全体のデジタル化は進みません。

これが、日本の生産性向上を阻み、世界における日本の地位を低下させた基本的な理由です。

そして、これは、この連載で繰り返し述べてきたことです。

IT革命は、1980年頃から生じている変化です。

誰でもPC(パソコン)を使えるようになり、誰もがデジタル情報を扱えるようになりました。そして、1990年頃から、インターネットを使えるようになりました。こうした変化が世界を一変させました。

繰り返しますが、これは40年前のことです。

その変化に、日本はまだ追いついていないのです。そのことを、新型コロナウイルスの感染が広がる中で、いやというほど見せつけられました。

いまさら言葉だけITからDXに替えるよりは、「ITでもDXでもよいけれども、とにかく紙中心の仕事システムから脱却しなければ話にならない」と思います。

「デジタル化」でなく「クラウド化」が重要

それに、「デジタル化」というだけでは、十分でありません。

「どんなデジタル化か?」が重要です。

私が思うには、デジタル化しても、データが自分の端末や会社のシステムに置かれている限り、十分な活用はできません。

情報を活用するためには、それをクラウドに上げる必要があります。これによって初めて検索やリンクが可能になります。

「クラウド・コンピューティング」という言葉は、2006年8月、当時のグーグルの最高経営責任者であったエリック・シュミット氏が用いたとされます。

インターネットに接続する環境さえあれば、さまざまなアプリケーションソフトや大規模なデータの保管など、さまざまなサービスを利用できるという考えです。

それから14年も経つのですが、日本では、企業情報をそのように扱うことを禁止している会社が多いのです。

多くの企業(とりわけ大企業)は、社内ネットワーク(LAN:Local Area Network)を構築しています。

従業員が用いるPCは、この社内ネットワークに接続されています。

社外から社内ネットワークに接続するには、VPN(Virtual Private Network:仮想専用線)を用います。

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