総務省の『情報通信白書』(令和元年)によると、2018年においてクラウドサービスを一部でも利用している企業の割合は58.7%であり、前年の56.9%から1.8ポイント上昇したにすぎません。
2014年にはこの比率は38.7%でしかなかったので、利用が進んでいると言えなくはありませんが、それでも、クラウドを利用している企業がほぼ半数でしかないというのは、驚きです。
しかも、「全社的に利用している」というのは33.1%にすぎず、25.6%の企業は「一部の事業所または部門で利用している」というだけです。
クラウドの性格からして、会社の一部だけで利用しても、会社全体の能率向上に結び付けるのは難しいと考えられます。
日本では、「クラウドにデータを預けるのは、重要な社内データを他人に委ねることになるので、セキュリティ上問題だ」と考えている人が多いのです。
前記『情報通信白書』によれば、クラウドサービスを利用しない理由としては、「必要がない」(46.0%)が第1位ですが、第2位は、「情報漏えいなどセキュリティに不安がある」(33.3%)となっています。事実は、「ゼロトラスト」の考えが指摘するとおり、まったく逆なのですが。
そして、例えば、GメールやGoogleドキュメントのようなごく一般的なアプリさえ使用を認めていない会社が少なくありません。
最近では、BYOD(Bring Your Own Device)という動きが生じています。これは、従業員が個人で所有しているPCやスマートデバイスを業務で使うことを認めるものです。スマートフォンの利用が一般化すると、いつまでも社内LANにこだわるシステムでは、従業員から見放されてしまうでしょう。
日本政府のクラウド化がやっと始まる
日本政府は、今秋からITシステムのクラウド化をスタートさせます。人事、給与、文書管理などの各省共通の基盤システムを、アメリカ・アマゾン・ドット・コム傘下のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)に発注する調整に入りました。整備・運用にかかる費用は、2026年度までに300億円を超えると予測されています。
「いまになってやっとクラウドか」と考えざるをえないのですが、現在のように各省庁でばらばらなシステムで、テレビ会議さえ満足にできないような状況よりは、ずっとましです。
それにしても、国の基幹的情報を処理するシステムに日本企業が関与できないのは、残念な気がします。
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