東大生が推薦「国語の成績が上がるマンガ」3選 入試の評論文は「前提知識」で理解が深まる

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まずは評論文でよく登場する「社会学」の内容がわかるマンガをご紹介します。

社会、宗教と人間の関係がわかるマンガ

人間は「社会的な動物」です。社会から要請されて、人の目を気にして自分の行動や考えを変えます。知らず知らずのうちに、社会の常識に染まってしまう。あるいは、染まったように演技をしてしまう。社会という、影も形もないものに支配されて生きているのが人間なのです。この考え方が、現代文でよく登場する構造主義や社会学の根幹になっています。

そして、「影も形もないものに支配されている」という意味で言うならば、「宗教」もこれと同じです。これも現代文では頻出のテーマですが、人類は「宗教」というある種の「虚構」を信じ、それによって進歩してきました

国語の勉強になるマンガ1:『ファイアパンチ』

この様子がありありとわかるマンガが、『ファイアパンチ』です。

『ファイアパンチ』(画像をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

僕はこのファイアパンチを読むまで、宗教というものに対する理解がイマイチ及んでいないところがありました。「なんで人は、神様を信仰するんだろうか?」と。それに対するある種の解答を、このマンガでは示してくれています。

このマンガは、雪が降りやまない過酷な世界が舞台です。身体を炎で燃やされた不死身の主人公の男性が、自分の身体を燃やした男に復讐をしようとするうちに、まったく意図せずにだんだんと周りの人から信仰され、神様になっていくという物語です。

この「神様になっていく過程」が、非常に秀逸です。主人公は誰かを救ったわけでもなく、むしろ意図せずに多くの人を殺してしまうこともあります。聖人君子なわけでもなく、ほんの少し正義感が強いだけの主人公が、「身体が燃えている」というその見た目で、どんどん神様へと変貌を遂げていくのです。

主人公自身も、神様の演技をしているうちに、だんだんと本当に「神様」になっていきます。主人公が神様ではないと知っている人も、彼を信仰する演技をしているうちに、本当に信じるようになっていく。この過程がテンポよく、かつ読者の予想を裏切る展開で描かれていて、非常に興味深い物語なのです。

キーワードとなるのは「演技」です。この物語は単純な復讐劇ではなく、途中から唐突に「映画」の話が登場します。作中で最強のキャラが、「主人公を題材にした映画を撮る」と言い出し、過酷な舞台設計や読者の予想を完全に無視して、主人公に演技をさせ、空気を読まずに「映画」の話をします。

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