東大生が推薦「国語の成績が上がるマンガ」3選 入試の評論文は「前提知識」で理解が深まる
主人公は、その「蟲」を使う「蟲師」を職業としています。使うといっても「征服」しているのではなく、ただそこにある自然として畏敬の念を持ちながら、「蟲」と共存しています。この構造こそ、日本人特有の文化観が見て取れるポイントです。
超自然的な存在を信仰していた時代から長い年月が経ってしまった今、この自然観を理解することは難しくなっています。『蟲師』は、その自然観の一端に触れることができるマンガなのです。
「生と死」の考え方がわかるマンガ
東大の入試問題では、「生と死」にまつわる価値観についての評論文もよく出題されます。過去20年の中で、5年分も出題されています。生きることと死ぬこと。生死に関わる議論は、東大以外でも評論のテーマに選ばれやすく、東大生の間でもよく話題に上がります。
死者というのは不思議なもので、そこにはいないにもかかわらず、生きている人にいろんな影響を与えます。僕らは墓参りをして、先祖に感謝し、故人に想いを馳せることもあります。存在していないのに、社会の中には確かに死者が存在しているのです。
そんな「死者」の不思議を描いたマンガが、この『春の呪い』です。
物語は、「春」という少女が亡くなったところからスタートします。その姉である「夏美」は、「春」の婚約者だった「冬彦」と交際するようになるのですが、その2人の関係性の中には、「春」の存在がいつもチラつく……一見ラブロマンスものだと思ってしまうのですが、『春の呪い』というタイトルどおり、死者である「春」がいつも物語の中心にいます。
この物語が面白いのは、「生の危うさ」と「死者の影響」を描いていることです。村上春樹の『ノルウェイの森』でも描かれていますが、死は生の対極にあるものではありません。死は生のすぐ近くにあって、生きている者は簡単に死のほうに足を踏み入れてしまう。主人公の夏美は底抜けに明るい性格なのに、春の死をきっかけに、本当に簡単に「死」を意識してしまうようになります。
また2人は交際してからずっと、「春の呪い」に苛まれるようになります。「今の自分たちを、彼女が見ていたとしたら」と考えて、存在しないはずの彼女の存在を意識して生きる……この物語は「生と死」のそうした剥き出しの議論が展開されていて、読む人の心を強く揺さぶるのです。
生と死の議論は、文学作品において昔からよく扱われるテーマです。でも、『春の呪い』で描かれている生と死の話は、僕らにとって斬新で、理解しやすく、文学作品と同じくらい、いやそれ以上に感想を共有したくなるのです。
いかがでしょうか? どの作品も本当に多くのことを教えてくれる内容で、僕も何度も何度も読み返しては新たな発見をしています。みなさんもぜひ、読んでみてください!
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